監修:特定社会保険労務士 馬場栄
今週のピックアップ
【労務情報】
◆ 残業代単価計算の分母の計算式と注意点
◆「休日」と「休暇」を使い分ける
◆ 給与計算時の注意点
◆ 雇用契約書や求人票などとのズレにも注意
◆ 休日は何日必要なのか
◆ 休みを増やす際の考え方
【KING OF TIME 情報】
◆ スケジュールの設定・管理
◆ 休暇区分設定
◆ 休暇管理、スケジュール管理
残業代単価計算の分母の計算式と注意点
休日と休暇の大きな違いは、残業代単価(給与)計算に含まれるか否かです。
最初に残業代単価の計算方法を確認してみましょう。
・残業代単価=賃金÷月の平均所定労働時間×法定割増率(原則1.25)
上記計算式の分母となる「月の所定労働時間」は以下の計算方法で導き出せます。
・月の平均所定労働時間=年間の労働日数※×1日の所定労働時間÷12か月
※年間の労働日数=365日−年間休日数
つまり、年間休日数が多くなる(=労働日数が少なくなる)ほど、月の平均所定労働時間は少なくなり、結果、残業代単価が高くなるという仕組みです。
ここで注目したいのが、年間の労働日数を算出する際に、365日(年間の暦日数)から差し引くのは「休日数」だけで、「休暇数」は考慮されないということです。
つまり『休日は残業代単価計算に含まれる』が、『休暇は含まれない』ということです。
なお、休暇の日数はどこに含まれるかというと、労働日数に含まれます。
「休日」と「休暇」を使い分ける
ではなぜ、そのような取り扱いとなるのでしょうか?
休日と休暇は、休みという点で変わりないですがその性質は異なります。
・休日:労働義務がない日(そもそも労働日ではない)
・休暇:本来は労働義務のある日だが労働を免除した日(ベースは労働日)
休暇例)労働日:月~金/休日:土日の場合
・夏季休暇:8/13(水)、8/14(木)、8/15(金)
→ 本来、水~金曜日は労働日だが、夏季休暇として労働義務が免除されます。
・有給休暇:月~金のいずれかの曜日で取得
→ 有休を取得することにより労働義務が免除されます。
※有休を土日(休日)に取得できないのは、休日はそもそも労働義務がないためです。
パートの方などシフト制で、もともと休日としている日に有休を使えないのも上記の理由からです。
残業代単価への影響についてまとめると、労働日と入れ替えた場合は下記のようになります。
・休日日数が増えれば残業単価が上がり、減れば下がる
・休暇日数は、増えても減っても残業代単価は変わらない
給与計算時の注意点
休日と休暇には前述のような違いがありますが、お客様の就業規則を拝見すると、
【休日:土日、祝日、夏季・年末年始休暇】
のように、すべての休みが盛り込まれていることが多いです。
この場合、休みのすべてが休日扱いとなりますので、給与(残業代)計算をする際は、前述の取扱いに従っておこなう必要があります。
就業規則が上記のように定められている場合で、
・名称が休暇でも、給与計算上は休日として扱っている場合
→ 残業代単価は高くなるものの、給与計算上は問題ありません。
・休暇を給与計算上、休日数に入れずに取り扱っている場合
→ 就業規則の規定とのズレが生じてしまいますので、未払いが発生している可能性があります。
※休日と休暇をその性質によって分け、給与計算上もそのように分けて取り扱いたい場合は、【休日:土日】【休暇:年末年始休暇】といったように就業規則上もきちんと区別し規定しておきましょう。
雇用契約書や求人票などとのズレにも注意!
また注意が必要なのは、就業規則と雇用契約書や求人票に記載された休日数が一致しない場合です。
記載が不一致の場合、社員に有利な条件が採用されるからです。
(例)年間休日数
・就業規則 : 休日125日
・雇用契約書:休日110日+休暇15日
・求人票 :休日105日+休暇20日
上記の場合では、社員にとって最も単価が高くなる就業規則の休日125日が採用されます。
労働基準法の考え方は、「契約条件に不一致がある場合、労働者にとって一番有利な条件を適用する」とされるためです。
就業規則を改定したり、逆に、就業規則は改定していないが、雇用契約書や求人票だけ手直しなどされている場合など含め、就業規則、雇用契約書、求人票の記載内容が一致しているか改めてご確認されることをお勧めします。
休日は何日必要なのか
法定休日は週1日とされていますが、法定労働時間の兼ね合いで1日の所定労働時間数によって変わってきます。
■原則の場合
週の法定労働時間数は40時間であるため、1日の所定労働時間を8時間としている場合は、週2日の休日が必要となり、年間ではおよそ105日となります。
・1日8時間×週5日=週40時間・・・週の残り2日は休日×年間週数
週1日(年52~53日)の休日で足りる場合
・月~金曜日×1日7時間+土曜日5時間=週40時間…週の休日1日×年間週数
・月~土曜日×1日6時間40分=週40時間…週の休日1日×年間週数 など
■1か月変形労働時間制の場合
必要な月・年の休日数は、1か月ごとの法定労働時間数と1日の所定労働時間数の組み合わせで下記のようになります。
※1日の所定労働時間数が一律である場合。日によって変わる場合は異なります。
《 計算方法例 》
・31日の月で1日8時間の場合
労働日数=177時間÷8時間=22.125…22日、月の休日数=31日-22日=9日
・31日の月で1日7時間の場合
労働日数=177時間÷7時間=25.285…25日、月の休日数=31日-25日=6日
■1年変形労働時間制の場合
必要な年の休日数は、年の法定労働時間数と1日の所定労働の組み合わせで下記のようになります。
※1日の所定労働時間数が一律である場合。日によって変わる場合は異なります。
※1日7時間の休日数85日は、1年変形の年間労働日数上限が280日のため。
《 計算方法例 》
年の法定労働時間数=365日÷7日×週法定労働時間数40時間=2085.71時間
・1日8時間の場合
年間労働日数=2085時間÷8時間=260.625…260日
年間休日数=365日-260日=105日
・1日7時間30分の場合
年間労働日数=2085時間÷7.5時間=278日
年間休日数=365日-278日=87日
この機会に会社が採用している制度と1日の所定労働時間数に応じて、休日が最低何日必要かご確認いただくことをお勧めいたします。それにより自社は休日が多いのか少ないのか(最低限をクリアしているか否か)が確認できます。
休みを増やす際の考え方
働き方改革により有給休暇の5日取得義務化がスタートしています。
また、会社の人手不足が続く中、求職者(新卒・中途)の会社選びのポイントは様々ですが、関心の高いポイントの1つとして、休みの日数や特別休暇の有無、有給休暇の取得状況なども挙げられるでしょう。
こうした流れを受け、休みを増やすことをご検討の会社もおられると思います。ご検討にあたっては、今回のメルマガの内容を踏まえ、下記の手順を参考にされてみてはいかがでしょうか。
(1) 最低限の休日数が不足している
→ まずは一定数の休日を設ける。(それでも回らなければ休日出勤してもらう)
(2) 有給休暇5日取得させられていない(義務が果たせていない)
→ 有給休暇の付与、計画年休や時季指定を活用し、取得させる。
※有給休暇については、下記のメルマガをご参考ください。
☞ 【有給休暇5日取得義務】 知らなきゃ損する!年次有給付与と年5日取得義務のルール
(3) 上記(1)(2)いずれもクリアしている
→ 有給休暇のさらなる取得促進、または休日を増やすのではなく特別休暇を設ける。
会社の業種やご状況等により一概に言えませんが、生産性・効率を上げ、長時間労働を抑え、休みが取れる環境作りを進める一方で、休みを取りやすくする(ある程度の休みを与える)ことで、働きやすい職場、長く続けられる環境をつくり、社員の定着率を上げ、継続的なスキルアップやモチベーションを維持、ひいては生産性・効率を上げられるよう推進していくといった施策も合わせて検討されてみてはいかがでしょうか。
KING OF TIME 情報
今回は、休日や休暇の取り扱いに関連のある以下の機能についてご案内します。
◆ スケジュールの設定・管理
◆ 休暇区分設定
◆ 休暇管理、スケジュール管理
スケジュールの設定・管理
本システムでは「勤務日種別」を設定することにより、その日の勤務時間を平日勤務として集計するか、休日勤務(法定休日勤務または法定外休日勤務)として集計するかを決められます。
また、毎週同じ設定を適用することも可能ですが、例えば事前に休日を振り替えたい場合や、年数回だけ土曜出勤日があるという場合には、手動で設定することもできます。
詳しくは以下のヘルプをご覧ください。
☞ 「勤務日種別」とは何ですか?
☞ 年に数回、土曜出勤日がある場合はどのように対応すればよいですか?
☞ 【振休】振替出勤日と振替休日を同時に申請する方法
休暇区分設定
本システムでは「休暇区分設定」で有給休暇や代休のほか、会社独自の休暇付与の設定ができます。休暇がうまく付与されないなどの問題が発生したときは、まずは設定内容を確認しなければなりません。詳しくは以下のヘルプをご覧ください。
☞ 慶弔休暇やリフレッシュ休暇など、独自の休暇を作成できますか?
☞ 休日出勤をしたのに代休が付与されないのはなぜですか?
年末年始のサポートセンターの営業時間
下記日程は休業期間となります。
2019年12月28日(土)~ 2020年1月5日(日)
サポートセンターの年末年始営業については以下となります。
2019年
12月27日(金) 時短営業 ( 09:30 ~ 13:00 )
※12:00 ~ 13:00 も営業しております。
12月28日(土) ~ 31日(火) 休業
2020年
1月 1日(水)~ 5日(日) 休業
1月 6日(月) 時短営業 ( 13:00 ~ 17:30 )
1月 7日(火) 通常営業 ( 09:30 ~ 12:00 / 13:00 ~ 17:30 )
休業期間中にいただく、お問い合わせフォーム・メールでのお問い合わせに対する回答は、2020 年 1 月 6 日(月)13:00 以降、順次対応させていただきます。
※弊社の休業期間中も、管理画面、タイムレコーダー 等のシステムは通常通りご利用いただけます。
別途、メールにて詳細をお送りしておりますので、そちらもご確認ください。
【件名】「KING OF TIME」:サポートセンター 年末年始営業のご案内
以上、「休日と休暇の違い」についてご案内いたしました。
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
次回は「正社員・アルバイトの雇用契約書の更新」について、お伝えする予定です。
今年一年、KING OF TIMEをご利用いただき、誠にありがとうございました。
2020年度も同様にご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、
何卒よろしくお願いいたします。