監修:特定社会保険労務士 馬場栄
今週のピックアップ
【労務情報】
◆「法律を正しく理解していなかった」では許されない
◆ 労働基準監督署の監督指導の内容
◆ 賃金請求権の時効とは
◆ 未払い残業代請求への影響
◆ いつから時効3年が適用される?
◆ 賃金以外の請求権の時効
【KING OF TIME 情報】
◆ 時間外労働の上限規制
◆ 時間外勤務申請と未申請残業通知機能
◆ アラート通知機能
◆ 勤務間インターバル不足カウント機能
「法律を正しく理解していなかった」では許されない
今まで、多くの会社の就業規則改定や作成の相談に携わっておりますが、退職した従業員からの未払い残業代請求をきっかけに、私どもにご相談いただくというケースも、決して少なくはありません。
このようなご相談で、ほとんどのケースは、会社は意図して残業代を支払っていないという訳ではなく、法律を誤って理解していたことが原因で意図せず支払っていないというものです。
しかし、法治国家であるこの国では、「知らなかった」で済まされる訳はなく、過去2年分の未払い分の支払いを要し、会社は予定していなかった時期に大きな金銭的な負担を強いられることになります。
(正しい残業代単価の計算方法は、以前発信した下記メルマガをご参照下さい)
☞ 【残業代単価について】~計算方法は正しいかを確認しよう~
訴えてきた従業員1人に支払う金銭は、会社が倒産する程のものではないかもしれません。しかし、未払い残業代リスクの怖いところは、その1人に発生した未払いは、他の従業員にも同様に起こっている可能性がある、ということです。
訴えられたことは、まさに「氷山の一角」ということですね。
労働基準監督署の監督指導の内容
ご参考に、昨年9月に厚生労働省から公表された、長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した、監督指導の結果を見たいと思います。
☞ 長時間労働が疑われる事業場に対する平成30年度の監督指導結果を公表します。
上記の表の通り、全体に占める賃金不払残業の割合は決して高くはありませんが、〔計算誤り等は含まない〕となっておりますので、「正しい残業代計算をしていない」という観点で見ると、事業場数はもう少し多くなると思われますね。
賃金請求権の時効とは
賃金請求権の時効は、現在2年間になります。
正確に言うと、
■ 民法:1年
■ 民法の特別法である労働基準法:2年
となっており、この国では特別法を優先するというルールになっておりますので、労働基準法の2年が適用されているということです。
ですが、実は2017年に民法が「1年→5年」に改正されました。(施行日は2020年4月)
つまり、民法と労働基準法の時効年数が逆転してしまったということです。
労働者を守るための法律でもある労働基準法が民法より下回ったことで、有識者の間で議論が行われた結果、労働基準法での時効を「民法と同様に原則5年。ただし、当面の間は3年」との内容で、現在行われている国会で審議される予定です。
ちなみに、労働者名簿や賃金台帳等の記録の保存義務についても「原則5年。ただし、当面の間は3年」との内容で審議される予定です。
なお、キングオブタイムのデータ保存期間は既に5年に対応しておりますので、ご安心ください。
未払い残業代請求への影響
インターネットで「残業代請求」と検索すると、初期費用0円・着手金0円・成功報酬制度と気軽さを謳った弁護士の広告が出てきます。(是非一度、検索してみて下さい)
一昔前であれば、一般の人が弁護士に何かを依頼することは、コスト面だけでなく心理的な面でもハードルが高いものでしたが、今は気軽に相談できる時代になっています。事実、残業代請求を含む労務トラブルに関する裁判件数も年々増加傾向にあります。
一方で、裁判となると解決までに要する年数は一般的に1~2年程度と言われます。
長丁場の裁判に対応するためには、ある程度まとまった未払い残業の金額でないと、弁護士事務所も利益が出せません。ですが、時効年数が3年に伸びることで未払い残業代の金額も増えますので、法改正後は今まで以上に残業代請求が増えることも懸念されます。
いつから時効3年が適用される?
では、労働基準法の時効が3年に変更となった場合、いつから時効3年が適用されるでしょうか?
仮に、改正法施行日が2020年4月の場合、このようなイメージになります。
施行日以降に支払う賃金から時効3年が適用されますので、2020年4月になった途端、過去3年分の請求ができるようになるというわけではなく、2020年4月以降、過去2年+1か月、2か月、3か月分・・・と延びていき、過去3年分を丸々請求できるのは、施行日2020年4月から3年経過する2023年4月以降となります。
時効3年がスタートする前に、意図しないリスクが存在しないか、念のため社内でチェックすることをお勧めします。
賃金以外の請求権の時効
賃金以外の請求権に関する時効は、以下の方向で検討されております。
<年次有給休暇>
現在は2年。この年数を延ばすか否かも議論されましたが、年次有給休暇の取得率向上という政策に逆行するおそれもあることから、2年を維持する方向です。
<労働災害補償>
現在は2年。労働者のケガ・病気と業務との関連性を確認する必要がありますが、時間の経過とともに立証が困難になる可能性があることから、こちらも2年を維持する方向です。
その他、退職時の証明(労働者が請求した場合、遅滞なく交付)、金品の返還(権利者が請求した場合、7日以内に返還)、帰郷旅費(契約解除の日から14日以内)などの請求権の時効も、変更がない方向です。
KING OF TIME 情報
今回は、以下についてご案内します。
◆ 時間外労働の上限規制
◆ 時間外勤務申請と未申請残業通知機能
◆ アラート通知機能
◆ 勤務間インターバル不足カウント機能
時間外労働の上限規制
「時間外労働の上限規制」は昨年2019年4月に施行された「時間外労働の上限規制」に対応する機能です。警告時間や上限時間の基準を任意で設定できます。
また、基準を超えて勤務している従業員を一覧で確認できます。
☞ 時間外労働の上限時間を設定することはできますか?
時間外勤務申請と未申請残業通知機能
従業員が上長の監督なしで残業している場合は注意が必要です。
本製品では、従業員による残業時間の申請を、管理者が承認する管理方法を採用できます。
☞ 申請した時刻までの残業を認めることはできますか?
☞ 申請や承認がされていない残業時間を把握することはできますか?
アラート通知機能
時間外労働が一定の数値を超えた場合に任意の色で表示したり、管理者にメール通知する機能も役立ちます。 以下の機能を活用し、従業員の労働時間の実態を把握しましょう。
☞ 勤務が一定時間、日数を越えた場合、メールで通知することはできますか?
勤務間インターバル不足カウント機能
本システムは従業員の方の休息時間を確保するための「インターバル制度」に対応しております。「インターバル不足カウント機能」と「アラート機能」を使うことで、インターバル時間が不足している従業員がいれば画面上にアラートを表示できます。
また、「メール通知機能」を組み合わせることでメールでも通知できます。
☞ 勤務間インターバル制度に対応していますか?
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
次回は「間違えて運用していませんか?1か月単位の変形労働時間制(その1)」について、お伝えする予定です。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。