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労務情報

配置転換や出向の有効活用 ~運用の注意点や出向に対する助成金など~

公開日:2021年1月14日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 
監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 


配置転換や出向の有効活用 ~運用の注意点や出向に対する助成金など~

今週のピックアップ

【労務情報】
◆ 出向に関する「産業雇用安定助成金(仮称)」の創設
◆ 配置転換や職務転換
◆ 出向とは?転籍との違い
◆ 出向と派遣との違い
◆ 出向の主な目的は?
◆ 現在の雇用調整助成金の対象となる出向とは?
◆ 異動(職務転換や配置転換)を行う際の注意点
◆ 異動(出向)を行う際の注意点
◆ 異動に関する雇用契約書の記載方法のポイント


【KING OF TIME 情報】
◆ 所属設定とは
◆ 所属作成した際のチェックリスト
☞ KING OF TIME 情報は 《 こちら 》


出向に関する「産業雇用安定助成金(仮称)」の創設

新しい年を迎え、また新年度の準備などで、既存社員の異動(配置転換や職務転換など)をご検討の会社も多いと思います。
長期化するコロナ禍において、大手企業が社員を出向させたというニュースも出ていますが、出向も異動のひとつです。

コロナ禍で認知度が高まった雇用調整助成金(特に休業に対するもの)ですが、この出向に対しても一定の要件を満たすと給付されます。
厚生労働省は「従業員の休業が長期化すれば仕事への意欲が低下してしまう懸念がある。雇用を維持しながら休業せずに働くことができる取り組みを後押ししたい」として、この出向に対する助成金の拡充を目的に「産業雇用安定助成金(仮称)」の創設とこれに関わる補正予算案が閣議決定されました。
これまでの助成金との大きな違いは、対象が出向元企業のみであったのに対し、出向先企業も対象となること、また助成金の給付率が上がることです(予定)。

今回は、出向(に対する助成金含む)を中心に、異動を行う上でのポイントについて記載いたします。広い意味での適材適所で会社の課題解決や社員の能力を有効に活用する手段として、参考にしていただければと思います。

<参考>厚生労働省

☞ 令和2年度 厚生労働省第三次補正予算案(参考資料:出向関係p2~4)

 >>> 詳しくはこちら ※外部リンクに移動します


配置転換や職務転換

企業が配置転換や職務転換を行う理由としては、下記のようなものが挙げられます。
・キャリア形成・教育の一環
・会社組織の活性化
・適材適所
・職場になじめない、協調性が欠如している社員に対し、別の環境(職場、上長の下)で再チャレンジさせる
・ある業務について適正不足の社員に対し、別の業務につかせる  etc

積極的な理由で行うものもあれば、問題社員への対応として行う場合もあるでしょう。
社員の仕事のできが悪いからと言って安易に解雇すると、労使トラブルとなり、解雇の撤回や金銭での和解を求められるなど、争いに発展するケースもあります。そうなると、これらの対応に会社は大きな労力(時間とコスト)を費やすこととなりえます。
そもそも解雇自体が認められづらいこともあり、会社が行う際には大きなリスクを伴うと言えるでしょう。

一方、配置転換や職務転換などは人事権の行使として、広く認められる傾向があります。社員が担当していた業務に向いていない場合などは、すぐに解雇ということではなく、上記のような配置転換や職務転換の性質を有効に活用し、まずは会社の中で、その社員にあった場所や業務がないか見つけてあげる(猶予を与える)ことも大切です。


出向とは?転籍との違い

異動には会社内におけるものだけでなく、別の会社に移るものも含まれます。これが出向です。出向は、「在籍型の出向」と「移籍型の出向」に分けられますが、一般的には前者を「出向」、後者を「転籍」と呼んでいます。(以下、「出向」と「転籍」と記載します。)

大きな違いは、元々在籍していた会社と社員との間の労働契約関係の有無にあります。
・出向は、出向元企業との労働契約(一部)は残したまま、出向先企業とも労働契約(一部)を結び、出向先企業からの指揮命令の下、業務に従事します。
・転籍は、元々在籍していた企業との労働契約は終了し(つまり退職のうえ)、転籍先の企業と新たに労働契約を結び、転籍先企業の指揮命令の下、業務に従事するかたちとなります。


そのため、一般的に出向は一定の期間を過ぎると出向元に戻ることを前提とするのに対し、転籍は転籍元に戻ることを前提としていません。
また、就業規則に規定があることを前提に、出向は社員の個別の同意が不要であるのに対し、転籍は同意が必要となります。


出向と派遣との違い

出向と似たものに派遣があります。
派遣は、労働契約が派遣元企業と社員、指揮命令は派遣先企業と社員と言う関係となります。

出向は、前述のとおり、出向元・出向先と社員との間で労働契約関係があるのに対し、派遣は派遣元企業と社員の間のみに労働契約関係がある(派遣先と社員の間にはない)点で両者は異なります。
会社間ではそれぞれ派遣契約、出向契約を締結します。

出向と転籍・派遣の違い

出向の主な目的は?

出向の主な目的としては、下記のものが挙げられます。

・労働者を離職させるのではなく、関係会社において雇用機会を確保する
例えば、高年齢者の再就職・雇用継続対策として、定年前後になった高年齢者を別の会社へ出向させたり、今般のコロナの影響で業績不振に陥った場合に、自社での解雇を避けるために行うなどのケースが挙げられます。
・経営指導、技術指導の実施
例えば、自社社員を別の会社の技術支援やノウハウ提供のために出向させるケースが挙げられます。
・職業能力開発の一環として行う
特に、若手社員を育成のために別の会社へ出向させ、専門的な知識や技術を習得させる目的で行われるケースが多いでしょう。
・企業グループ内の人事交流の一環として行う
例えば、子会社の人材不足解消のために、親会社の社員を出向させるなど、人材の過不足の解消や関連企業間での連携を強化のために行われます。

社員を出向させる、また受け入れることで、会社や人材の課題解決や成長が期待できます。世の中の状況、会社の事情に応じ、今後は社内だけでなく、社外にも視野を広げ、検討してみてもよいのではないでしょうか。

<参考>厚生労働省

☞ 「雇用シェア」(在籍型出向制度)を活用して、従業員の雇用を守る企業を無料支援します!

 >>> 詳しくはこちら ※外部リンクに移動します


現在の雇用調整助成金の対象となる出向とは?

冒頭に記載した助成金について、新たに創設予定の「産業雇用安定助成金(仮称)」についての詳細は未定のため、ここでは、現在ある出向に対する雇用調整助成金について記載します。対象となる出向については、下記のとおりですが、出向の中でも、限定的かつ条件付きとなっています。

・雇用調整を目的として行われるものであって、人事交流・経営戦略・業務提携・実習のため等に行われるものではなく、かつ、出向労働者を交換しあうものでないこと
→ 具体的には、経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が雇用の維持を図ることを目的としたものが対象となります。
・労使間の協定によるものであること
・出向労働者の同意を得たものであること
→ 助成金を受給するにあたっては、労使協定および個別の同意が必要となります。
・出向元事業主と出向先事業主が、資本的、経済的・組織的関連性等からみて、独立性が認められること
→ 出向元と出向先が、親子・グループ関係にないなど。
・出向期間が3か月以上1年以内であって出向元事業所に復帰するものであること
→ コロナ特例では1か月以上1年以内となっています。
・出向元事業所が出向労働者の賃金の一部(全部を除く)を負担していること
→ 現状は、出向先が賃金の一部を負担していても、出向先は対象となりません。

<参考>厚生労働省

☞ 雇用調整助成金ガイドブック(p10~p11)

 >>> 詳しくはこちら ※外部リンクに移動します

☞ 「産業雇用安定助成金(仮称)」の創設

 >>> 詳しくはこちら ※外部リンクに移動します


異動(職務転換や配置転換)を行う際の注意点

解雇に比べ、異動は人事権の行使として広く認められる傾向があると前述しましたが、どこまで認められるのでしょうか?もちろん、人事権があるからと言って無制限に認められる訳ではありません。 まずは、就業規則に「業務上の都合により職務転換や配置転換を命じることができる」旨を定めておく必要があります。
実際にこれに基づき転勤が行われ、雇用契約で勤務地や職種が限定されていない場合には、会社は個々の社員の同意なしに転勤や配置転換を命じることできます。
職務転換や配置転換の命令を行う際しては、業務上の必要性がない場合、不当な動機・目的が認められる場合、社員に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合など特段の事情がある場合には、権利の濫用に当たるとみられる可能性がありますので注意が必要です。
特に転勤などでは本人や家族の健康状態や育児・介護の状況も十分考慮するなど丁寧に運用しましょう。また専門性の高い仕事をしてもらうことを前提に雇用した社員に、それ以外の仕事をさせた場合などにおいても権利の濫用とみなされてしまう可能性もあるため、こちらも注意が必要です。

<参考>厚生労働省

☞ 「配置転換」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性

 >>> 詳しくはこちら ※外部リンクに移動します


異動(出向)を行う際の注意点

出向についても、就業規則にも規定があり、社外勤務の定義、出向期間、出向中の社員の地位、賃金、退職金などその処遇等に関して出向者の利益に配慮した詳細な規定が設けられている場合には、会社は社員に、個別的に同意を得ることなく、在籍出向を命じることができます。
また、職務転換等と同じく、下記のような場合は権利の濫用とみなされる恐れがあるため注意が必要です。
・在籍出向させることに対する合理性・必要性ない
・出向者の人選基準についての合理性ない(具体的な人選にもその不当性をうかがわせるような事情がある)
・社員が出向によって業務内容や勤務場所に変更があり、その生活関係、労働条件等において著しい不利益を受ける  etc

<参考>厚生労働省

☞ 在籍出向を行う際の労働法令上の留意点

 >>> 詳しくはこちら ※外部リンクに移動します

異動に関する雇用契約書の記載方法のポイント

就業規則への規定だけでなく、個別の雇用契約書にも異動の可能性を明記し、社員に異動があることを認識した上で同意を得ておくことで、異動に対する人事権を補強します。さらに予定しているメイン業務以外の業務にも従事する可能性があることも明記しておくとよいでしょう。

例)営業その他会社が指示するあらゆる業務。
ただし、異動(職務転換、配置転換など)により、他の職務に就かせることがあります。

一方で、専門性の高い仕事、異動の可能性が低いことを前提に社員を雇用する場合には、職務を限定した方が良いケースもあります。
例えば、限定的な職務に対し、専門職としての能力や経験を期待して雇用する場合などは、いざと言うときに雇用契約書を前提として本人と退職交渉を行いやすくなります。

どちらの記載がベストであるかは会社の方針や事情等によりますが、こうした細かい点に留意することが、トラブルを未然に防ぐとともに、いざと言うときに会社を守る上で有効なポイントとなりえます。改めて自社で使用している雇用契約書も含めて確認してみてください。



KING OF TIME 情報


今回は、初期設定時や部署または拠点等が増える際に作成が必要となる「所属設定」についてご案内いたします。

◆ 所属設定とは
◆ 所属作成した際のチェックリスト



所属設定とは

管理を必要とされている最小単位の部署または拠点等でご登録いただく設定のことです。

例)本社営業部の中にA・B・Cのチームがあり、営業部長はいるものの、各チームにはチーム長がおり、チーム内の従業員管理はチーム長が行っている場合。
以下のように3つの所属を作成してください。

・本社営業部Aチーム
・本社営業部Bチーム
・本社営業部Cチーム

☞ 「所属設定」とは何ですか?

 >>> 詳しくはこちら

所属を作成した際のチェックリスト

所属を作成した際には、以下の設定項目も併せてご確認くださいませ。

1.タイムレコーダー設定
所属単位でタイムレコーダー設定をご変更いただけます。
新規作成した所属は、「基本タイムレコーダー設定」を参照しておりますので、必要に応じて設定を変更してください。

☞ 管理画面の「タイムレコーダー設定」ではどのような設定ができますか?

 >>> 詳しくはこちら



2.一般管理者の所属管理権限
一般管理者を作成する際、所属単位で権限を変更することが可能です。
新規作成した所属を管理する一般管理者に所属管理権限の設定を変更してください。

☞ 管理者アカウントはどのように作成すればよいですか?

 >>> 詳しくはこちら



3.申請承認フロー設定
所属単位で申請承認フローの承認者を設定いただけます。
新規作成した所属は、「基本申請承認フロー設定」を参照しておりますので、必要に応じて承認者を変更してください。

☞ 申請承認フローはどのように設定しますか?

 >>> 詳しくはこちら



4.自動スケジュール設定
新規作成した所属の自動スケジュールは未設定となります。
ベースとなるスケジュールの登録が必要な場合は新たに設定してください。

☞ 「自動スケジュール設定」とは何ですか?

 >>> 詳しくはこちら



5.通知設定の対象選択
必要に応じて、各通知の対象所属を確認してください。

☞ 通知

 >>> 詳しくはこちら



本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
次回は、「令和3年4月からの36協定届出の取扱い緩和~担当者が押さえておきたい、届出方法の変更点とは~」についてお伝えする予定です。

今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。


監修元:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント

 
 
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