監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄
今週のピックアップ
【労務情報】
◆最低賃金の目安と答申の状況
◆最低賃金の近年の動向など
◆最低賃金とは?
◆パート・アルバイト社員等は?
◆本社とは別の地域に事業所がある場合は?
◆最低賃金の対象となる賃金とは?
◆割増計算の基礎となる賃金との違いに注意
◆最低賃金のチェックポイントと方法
◆生産性向上のための支援制度
【KING OF TIME 情報】
◆対応が必要な処理に表示される内容(設定による表示)
☞ KING OF TIME 情報は 《 こちら 》
令和3年度(2021年10月からの)最低賃金の目安と答申の状況
7月16日に中央最低賃金審議会において、今年度の地域別最低賃金額改定の目安が示されました。 引上げ額の全国加重平均は 28 円となり、目安制度が始まった昭和 53 年度以降で最高額、引上げ率に換算すると 3.1%となっています。
ポイントとしては、都道府県の経済実態に応じ、各都道府県はABCDの4ランクに分けられていますが、例年、そのランクに応じて引上げ額の目安が提示されますが、今年度は、一律28円となっています。
それを受け、各都道府県から答申がなされ、47都道府県で28円~32円の引上げ(28円が40都道府県で、29円が4県、30円が2県、32円が1県)となっています。
最低賃金改定の流れはおよそ下記のとおりです。
➀毎年、中央最低賃金審議会で目安を提示。
➁各都道府県にある地方最低賃金審議会にて調査審議等を行い、答申。
③各都道府県労働局長が決定。
☞<参考>令和3年度地域別最低賃金額改定の目安について(厚生労働省)
>>>詳しくはこちら
☞<参考>令和3年度地域別最低賃金答申状況(厚生労働省)
>>>詳しくはこちら
最低賃金の近年の動向など
ここ数年の最低賃金の動きについては、「1億総活躍プラン」(2016年)、「働き方改革実行計画」(2017年)において、「最低賃金を毎年3%程度上げていき、全国加重平均が1,000円になることを目指す」と示され、それ以降、およそそのとおりに最低賃金が引き上げられてきました。
しかし、昨年(2020年)は「新型コロナ感染拡大の影響等により、引上げ額の目安を示すのは困難、現行水準を維持することが適当」とされました。
全国平均の推移 ※()内は前年比
2016年823円(25円、3.13%)
2017年848円(25円、3.04%)
2018年874円(26円、3.07%)
2019年901円(27円、3.09%)
2020年902円( 1円、0.11%)
☞<参考>地域別最低賃金の全国加重平均額と引上げ率の推移(厚生労働省)
>>>詳しくはこちら
最低賃金とは?
改めて、最低賃金とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額と定めたものです。会社はその最低賃金以上の賃金を労働者に支払わなければなりません。
最低賃金を下回っていた場合は、会社は労働者に対してその差額を支払う必要があります。最低賃金を守らない場合、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められています。
パート・アルバイト社員等は?
最低賃金は、正社員のみならず、契約社員、パート・アルバイト、嘱託社員、派遣社員、外国人実習生など、雇用形態に関係なく、全ての労働者に対して適用されます。
仮に、最低賃金額より低い賃金で労働者の合意を得ていたとしても、それは認められません。その場合は、法律によって強制的に無効となり、最低賃金額と同様の金額で合意したとみなされます。
本社とは別の地域に事業所がある場合は
本社所在地とは別の都道府県に、事業所(支店や営業所、工場や店舗など)がある場合は、従業員の最低賃金は、従業員が所属する事業所の地域の最低賃金が適用されます。
本社所在地の最低賃金に合わせている場合、他の地域より高ければ問題ありませんが、逆の場合は、最低賃金を下回ってしまうことがあるため注意が必要です。最低賃金をチェックする際は事業所ごとに分けて行いましょう。
複数事業所がある場合の対策として、最低賃金の高い方に合わせ、全従業員の基本給を一律上げる方法もありますが、大幅なコスト増となりえます。そのため、基本給はそのままで、地域ごとに最低賃金を上回るように、「地域手当」を支給するのも一案です。
例えば、本社が東京以外で支社が東京にあるような場合、賃金規程に東京支社勤務の従業員のみ最低賃金や物価等を考慮し、地域手当を支給すると定め支給すると言う方法です。本社に転勤した際は、手当の支給を止めるといった運用も可能です。これによりある程度コストを抑えつつ、最低賃金もクリアできます。転勤がある会社では特に有効でしょう。
最低賃金の対象となる賃金とは?
最低賃金の対象となる賃金は、ひと言で言うと、「毎月支払われる基本的な賃金」です。実際に支払われている賃金から以下の賃金を除いたものが最低賃金の対象になります。
最低賃金から除くもの(対象外)
・結婚手当など :臨時に支払われる賃金
・賞与など :1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
・時間外割増賃金など:所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金
・休日割増賃金など :所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金
・深夜割増賃金など :午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分
・精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
☞<参考>厚生労働省㏋ 最低賃金の対象となる賃金
>>>詳しくはこちら
ここで注意したいのが、精皆勤手当です。精皆勤手当は、最低賃金の計算の基礎に含めることができません。なぜなら、遅刻・早退・欠勤などあると支給しない。としている会社が多いと思いますが、この支給しない場合があるため(精皆勤手当含めて最低賃金をクリアしていても、支給しない場合、最低賃金を下回るため)です。
割増計算の基礎となる賃金との違いに注意
一方で、精皆勤手当は、時間外割増等を計算する際には、計算の基礎に含める必要があるため、こちらも注意が必要です。
精皆勤手当とは逆に、住宅手当は最低賃金の対象に含まれますが、割増計算の基礎には含めなくてもよい(一律支給の場合などは除く)手当です。
計算の基礎(対象)に含めるか否かについては、「最低賃金」と「割増計算」とで取り扱いが異なる手当もあるため、混同しないように整理しておきましょう。
☞<参考>厚生労働省㏋ 割増基礎の基礎となる賃金とは?
>>>詳しくはこちら
最低賃金のチェックポイントと方法
しばらく最低賃金をチェックしていない会社は、従業員の給与が最低賃金額を下回っていることがあるかもしれません。ご参考にチェックのポイントとその方法を記載します。
■支給している給与(手当)が最低賃金の対象か否か
まず、自社の給与体系と前述の最低賃金の対象となる賃金を改めて確認しましょう。特に精皆勤手当や無事故手当などのように、一定の要件により支給されない賃金がある場合には注意が必要です。
■給与の設定金額が最低賃金に近い場合(若手社員・契約社員・パート・アルバイトなど)
3年前(2018年)に加重平均で874円であった最低賃金が2021年に目安どおり28円上がると930円となります。3年間で時間単価では56円、月額では月の平均所定労働時間数が168時間の場合9,408円上がることになります。昇給が最低賃金の上昇ペースを下回っている場合は注意が必要です。
■給与改定や契約更新が最低賃金が上がる前(4月など)の場合
給与改定や契約更新が、4月など最低賃金が上がる前に行っている会社では、その時点では最低賃金を上回っているものの、10月に改定されると下回ってしまうことがあります。それに対しては、
①給与改定や契約更新時期を10月にする。
➁3%上昇を見込んで行う。
③10月に再度給与改定を行う。
など考えられます。手間やコストを考えると、可能であれば➀がベストでしょう。
新卒社員の初任給など、求人を出した際は最低賃金を上回っているが、10月に改定された結果、入社時(新卒社員であれば翌年4月)には下回っているというケースもあります。こちらに対しても、きちんと最低賃金を確認の上、対応しましょう。
■最低賃金との比較の方法
最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を以下の方法で比較します。賃金額が最低賃金額を上回っていれば問題ありません。
・時間給の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)
・日給の場合
日給額÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
・月給の場合
月給額÷1ヵ月平均所定労働時間(※)≧最低賃金額(時間額)
※1ヵ月平均所定労働時間は、以下の計算式で求めます。
(365日-年間休日数)×1日の所定労働時間 ÷12ヵ月
例)月給額168,000円、年間休日数113日、1日の所定労働時間8時間
1ヵ月平均所定労働時間=(365日-113日)×8時間 ÷12ヵ月=168時間
168,000円÷168時間が最低賃金額を上回っているかいないかを確認。
最低賃金額以上であれば問題ありません。
・出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合
出来高払制等により計算された賃金総額÷総労働時間数≧最低賃金額(時間額)
※この場合、所定労働時間ではなく、時間外等を含めた実際の総労働時間数で割り、1時間当たりの賃金を算出するのがポイントです。
※月給と出来高給の両方を支給している場合などは、それぞれ上記の方法で計算した額を合計し、最低賃金額と比較します。
そもそもの所定労働時間数が就業規則や実態とズレているケースもありえますので、これを機会に就業規則や賃金規程も合わせて確認しておきましょう。
☞<参考>厚生労働省㏋ 最低賃金のチェック方法は?
>>>詳しくはこちら
生産性向上のための支援制度
最低賃金を上げる目的の1つには、企業の生産性の向上が挙げられます。 これを支援する制度として下記のようなものもありますので参考にご紹介します。
■業務改善助成金
中小企業・小規模事業者の業務の改善を国が支援し、従業員の賃金引上げを図るために設けられた制度です。
生産性向上のための設備投資などを行い、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げた中小企業・小規模事業者に対して、その設備投資などにかかった経費の一部が助成されます。
☞<参考>業務改善助成金(厚生労働省)
>>>詳しくはこちら
■働き方改革推進支援センター
賃金引上げのための業務改善に関する相談支援を行うとともに、生活衛生関係営業等の収益力向上・生産性向上に向けた支援事業等を紹介するため、上記業種に関し関係機関が開催するセミナーや出張相談会等に講師の派遣を受けられます。
☞<参考>働き方改革推進支援センター(厚生労働省)
>>>詳しくはこちら
■働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)
3社以上で組織する中小企業の事業主団体において、労働時間短縮や賃金引上げに向けた生産性向上に資する取組に要した費用が助成されます
☞<参考>働き方改革推進支援助成金(厚生労働省)
>>>詳しくはこちら
KING OF TIME 情報
前回に引き続き「対応が必要な処理」についてご紹介します。 今回はオプションなどの設定によって表示される内容をご案内します。
◆対応が必要な処理に表示される内容(設定による表示)
対応が必要な処理に表示される内容(設定による表示)
設定をすることで表示される項目は以下の4項目です。
1.有休付与関連設定によるアラート表示
雇用区分設定の[有休付与関連設定]にて、有休付与の算出基準を設定することで、有休の付与日と付与日数を自動計算し、アラートでお知らせします。 自動計算するためには入社日の登録が必須です。
※管理者設定で「従業員設定」が「〇閲覧・編集」以外の場合は表示されません。
☞有給休暇付与機能とはなんですか?
>>>詳しくはこちら
2.補助項目申請
勤怠時間とは別に任意の項目を集計されたい場合は、「設定」 > 「その他」 > 「補助項目設定」にて、補助項目を作成します。 補助項目が従業員より申請された際は、申請承認フローに登録されている管理者の対応が必要な処理に表示されます。 申請内容をご確認のうえ、承認または棄却の処理をお願いします。
※全権管理者であっても申請承認フローに登録がない場合は表示されません。
☞補助項目を時間帯で利用するにはどうすればよいですか?
>>>詳しくはこちら
3.エラー勤務設定によるエラー表示
オプションのエラー勤務設定を『表示する』にすることで、該当のエラー勤務を表示します。 エラー内容をご確認のうえ、修正または従業員へ勤務状況の確認をお願いします。
※管理者設定で「実績・打刻」が「×権限なし」の場合は表示されません。
☞勤務予定がないのに打刻がある勤怠をエラーにできますか?
>>>詳しくはこちら
☞スケジュールはあるのに、打刻が行われていない勤務日をピックアップできますか?
>>>詳しくはこちら
4.働き方改革設定によるアラート表示
「設定」 > 「その他」 > 「働き方改革設定」にて、各種設定の警告基準値や上限基準値に達した従業員が発生した際に表示します。 基準を超過した従業員の詳細をご確認のうえ、従業員の働き方などご検討ください。
※管理者設定で「実績・打刻」が「×権限なし」の場合は表示されません。
☞時間外労働の上限時間を設定することはできますか?
>>>詳しくはこちら
☞「高度プロフェッショナル制度」に対応していますか?
>>>詳しくはこちら
☞有休年5日以上取得義務に対応していますか?
>>>詳しくはこちら
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。