監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄
今週のピックアップ
【労務情報】
◆11月は「過労死等防止啓発月間」です。
◆啓発月間の主な実施事項
◆過労死等の労災補償状況
◆「脳・心臓疾患の労災認定の基準」
◆労働時間と労働時間以外の負荷要因
【KING OF TIME 情報】
◆補助項目の活用方法(時間帯)
◆補助項目の表示方法
☞ KING OF TIME 情報は 《 こちら 》
11月は「過労死等防止啓発月間」です。
厚生労働省では、毎年11月を「過労死等防止啓発月間」と定めています。期間中「過重労働解消キャンペーン」として、著しい過重労働や悪質な賃金不払残業などの撲滅に向けた重点的な監督指導等をおこなっています。
「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡、強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡またはこれらの脳血管疾患、心臓疾患、精神障害をいいます。
今年の9月には、「脳・心臓疾患の労災認定基準」が改正され、労働時間以外の負荷要因として、「休日のない連続勤務」、「勤務間インターバルが短い勤務」や「身体的負荷を伴う業務」を新たに規定し、他の負荷要因も整理されています。
長時間労働がない会社においても、これらをチェックすることで労務管理のポイントが得られます。ぜひ、ご参考ください。
☞ <参考>脳・心臓疾患の労災認定基準改正概要(厚生労働省)
>>> 詳しくはこちら
啓発月間の主な実施事項
月間中の主な実施事項として、労使の主体的な取組の促進やキャンペーンの趣旨などに関する周知・啓発の実施などがありますが、注目すべきは「過重労働が行われている事業場などへの重点監督の実施」です。
この期間に労働基準監督署の監督対象となる事業場等は、下記1のとおりですが、こちらに該当しなくても、下記2の「重点的に確認する事項」については、通常の監督において確認される事項とも重なります。つまり、日ごろの労務管理を行う上で留意すべきポイントと言えます。
1.監督の対象とする事業場等
以下の事業場等に対して、重点監督を実施します。
(1)長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場等
(2)労働基準監督署及びハローワークに寄せられた相談等から、離職率が極端に高いなど若者の「使い捨て」が疑われる企業等
2.重点的に確認する事項
(1)時間外・休日労働が「時間外・休日労働に関する協定届」(いわゆる36協定)の範囲内であるか等について確認し、法違反が認められた場合は是正指導します。
(2)賃金不払残業が行われていないかについて確認し、法違反が認められた場合は是正指導する。
(3)不適切な労働時間管理については、労働時間を適正に把握するよう指導する。
(4)長時間労働者に対しては、医師による面接指導等、健康確保措置が確実に講じられるよう指導する。
なお、重大・悪質な違反が確認された場合は、送検し、公表するとされています。
☞ <参考>過重労働解消キャンペーン(厚生労働省)
>>> 詳しくはこちら
過労死等の労災補償状況
今年6月に厚生労働省が公表した「令和2年度過労死等の労災補償状況」によると、
脳・心臓疾患に関する令和2年度の労災請求件数、認定件数(率)については、下記のとおりとなっています。
昨年はいずれも減少していますが、一昨年までの数年は、請求件数は増加してきた一方で、認定件数(率)は減少してきています。つまり、労災認定されるような案件は減っているものの、請求する側は、これは労災ではないか?と、認定基準よりも幅広く捉え、実際に請求するケースが増えている(請求の敷居が下がっている)とも考えられます。
■脳・心臓疾患に関する事案
(1)請求件数784件
平成28年度(825件)から令和元年度(936件)までは毎年増加。
(2)業務上と認定された件数と認定率は194件・29.2%
平成28年度(260件・42.3%)から令和元年度(216件・36.1%)までは毎年減少。
※(2)は、前年度以前に請求されたものを含みます。
※業種別、職種別(ともに大分類)では、請求件数、認定件数とも、下記の順で多くなっています。()内は、請求件数/業務上と認定された件数です。
【業種別】
①運輸・郵便業(158件/58件)
②卸売・小売業(111件/38件)
③建設業 (108件/27件)
【職種別】
①輸送・機械運転従事者 (148件/60件)
②専門的・技術的職業従事者(112件/27件)
③サービス職業従事者 (80件 /23件 ※認定件数は販売従事者も同順)
☞ <参考>令和2年度「過労死等の労災補償状況」
>>> 詳しくはこちら
「脳・心臓疾患の労災認定の基準」
脳・心臓疾患が労災(業務が原因)とされる否かの基準については、大きく3つのポイントがあります。
(1)異常な出来事
(2)短期間の過重労働
(3)長期間の過重労働
冒頭にも記載した通り、「脳・心臓疾患の労災認定の基準」が改正されました。
特に、上記(3)の「長期間の過重業務」については、従来基準に加えて、労働時間のみで業務と発症との関連性が強いと認められる水準には至らなくても、これに近い時間外労働が認められ、これに加えて一定の労働時間以外の負荷が認められるときには、業務と発症との関連性が強いと評価できることが明示されました。
労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合的に考慮する際の留意点として、次のようにされています。
・労働時間が長いほど、労働時間以外の負荷要因による負荷がより小さくとも業務と発症との関連性が強い場合がある
・労働時間以外の負荷要因による負荷が大きいまたは多いほど、労働時間が短くても業務と発症との関連性が強い場合がある
労働時間と労働時間以外の負荷要因
■労働時間
・発症前1か月間におおむね100時間
・または発症前2~6か月間の1か月平均がいずれかの期間でおおむね80時間
を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる。
※時間外労働=週40時間を超える労働時間数
■労働時間以外の負荷要因
(1)勤務時間の不規則性
①拘束時間の長い勤務
拘束時間数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、休憩時間数・回数、業務内容等の観点から検討し、評価されます。
拘束時間とは、労働時間、休憩時間その他、会社に拘束されている時間(始業から終業までの時間)を言います。
なお、1日の休憩時間がおおむね1時間以内の場合には、労働時間の項目における評価との重複を避ける(休憩時間が短い=労働時間が長いとなる)ため、この項目では評価されません。
②休日のない連続勤務
連続労働日数、休日の数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、業務内容等の観点から検討し、評価されます。
その際、休日のない連続勤務が長く続くほど業務と発症との関連性をより強めるものであり、逆に、休日が十分確保されている場合は、疲労は回復ないし回復傾向を示すものであることを踏まえて評価されます。
③勤務間インターバルが短い勤務
その程度(時間数、頻度、連続性等)や業務内容等の観点から検討し、評価されます。
勤務間インターバルとは、終業から始業までの時間を言います。
なお、長期間の過重業務の判断に当たっては、睡眠時間の確保の観点から、勤務間インターバルがおおむね11時間未満の勤務の有無、時間数、頻度、連続性等について検討し、評価されます。
☞ <参考>勤務間インターバル制度について(厚生労働省)
>>> 詳しくはこちら
④不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務
予定された業務スケジュールの変更の頻度・程度・事前の通知状況、予測の度合、
交替制勤務における予定された始業・終業時刻のばらつきの程度、一勤務の長さ、一勤務中の休憩の時間数・回数、業務内容及びその変更の程度等の観点から検討し、評価されます。
「不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務」とは、予定された始業・終業時刻が変更される勤務、予定された始業・終業時刻が日や週等によって異なる交替制勤務(月ごとに各日の始業時刻が設定される勤務や、週ごとに規則的な日勤・夜勤の交替がある勤務等)、予定された始業または終業時刻が相当程度深夜時間帯に及び、夜間に十分な睡眠を取ることが困難な深夜勤務を言います。
(2)事業場外における移動を伴う業務
①出張の多い業務
出張(特に時差のある海外出張)の頻度、出張期間、交通手段、移動時間及び移動時間中の状況、移動距離、出張先の多様性、宿泊の有無、出張中の業務内容等の観点から検討し、併せて出張による疲労の回復状況等も踏まえて評価されます。
また、出張に伴う勤務時間の不規則性についても、適切に評価することとされています。出張に限らず、その他事業場外における移動を伴う業務についても、およそ同様の内容となっています。
その他、心理的な負荷を伴う業務、身体的な負荷を伴う業務、作業環境の観点からも検討し、労働時間と合せ総合的に評価することとされています。
労務管理を行う上では、労働時間を丁寧に把握するとともに、上記のポイントについても配慮を行い、社員の健康確保、パフォーマンスの維持・向上に取り組んでいきましょう。
☞ <参考>血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の 認定基準について(厚生労働省) p2後半~
>>> 詳しくはこちら
KING OF TIME 情報
今回は前回に引き続き、補助項目設定についてご紹介いたします。
◆補助項目の活用方法(時間帯)
◆補助項目の表示方法
補助項目の活用法(時間帯)
今回は政府がかねてより働き方の一つとして推奨している「副業」についてご案内いたします。
副業・兼業を行う労働者の労働時間には、通算ルールというものが定められており、事業場ごとの労働時間を通算して計算する必要があります。
副業先の労働時間管理を行う場合、補助項目設定で時間数を集計することが可能です。
集計にあたり事前設定が必要です。
設定 > その他 > 補助項目設定
時間帯設定後、利用グループ設定・利用条件設定の詳細は、下記コンテンツをご参照ください。
☞ 補助項目を時間帯で利用するにはどうすればよいですか?
補助項目の表示方法
補助項目の集計値を確認するためには、カスタムデータ項目設定の作成が必要です。
作成したカスタムデータ項目設定は「タイムカードカスタム」で確認ができます。
☞ 集計項目をカスタマイズできますか?
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。