監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄
今週のピックアップ
【労務情報】
◆新たに定義されたパワーハラスメントとは?
◆企業が対応すべき内容とは
◆パワハラが発生してしまったら
◆社内調査のポイント
◆調査に基づく措置のポイント(配置転換)
◆調査に基づく措置のポイント(懲戒処分)
【KING OF TIME 情報】
◆年末年始休暇設定の種類について
☞ KING OF TIME 情報は 《 こちら 》
厚生労働省では、12 月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、ハラスメントのない職場づくりを推進するため、都道府県労働局に「ハラスメント対応特別相談窓口」を開設しています。
中小企業も2022年4月から(それまでは努力義務。大企業は2020年6月から)、職場におけるパワーハラスメント防止のための雇用管理上必要な措置を講じることが義務づけられます。
ハラスメントは発生させないことが何よりも大切ですが、万が一発生してしまった場合、その対処法を誤ると問題がより大きくなってしまう恐れがあります。
パワーハラスメントについて、その対応方法を中心にお届けいたします。
新たに定義されたパワーハラスメントとは?
職場におけるパワーハラスメント(以下、パワハラ)とは、以下の(1)から(3)の全て満たすものと定義されています。
(1)優越的な関係を背景とした言動であって
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり
(3)労働者の就業環境が害されるもの
上記について、これらに該当するか否かの判断は、
・当該言動の目的
・当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む、当該言動が行われた経緯や状況
・業務や業態、業務内容や性質、当該言動の態様・頻度・継続性
・労働者の属性や心身の状況
・行為者との関係性
等を総合的に考慮して判断することが必要とされています。
☞ <参考>パワーハラスメントの定義(厚生労働省)
>>> 詳しくはこちら
パワハラの代表的なものとして以下の6つの類型が挙げられています。これらはあくまで例示であるため、当てはまらないからといって直ちにパワハラではない。ということにはならないため注意が必要です。
(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
(5)過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
☞ <参考>ハラスメントの類型と種類(厚生労働省)
>>> 詳しくはこちら
企業が対応すべき内容とは
パワハラ防止法の施行により企業は少なくとも、以下の対応を取る必要があります。
(1)事業主の方針等の明確化、およびその周知・啓発
(2)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(3)職場におけるパワーハラスメントに掛かる事後の迅速かつ適切な対応
「今まで、社内でパワハラに関する話を聞いたことがない」といった会社でも、実際は、被害者が声を上げていなかったり、会社が気づいていないといったケースも考えられます。
最近ではSNSの普及や意識の変化等により、社内と世間の垣根が低くなっており、ひとたび社外に話が出れば、瞬く間に世間に広がるリスクもあります。広がってしまってから、「何で会社に相談してくれなかったんだ」「社員の声を丁寧に聞いておけばこんなことにはならなかったのに」と思っても後の祭りです。
パワハラを含むハラスメント対策は、単に法律上、義務だからという理由で、最低限の措置義務のみを形式的に行うだけではなく、問題を未然に防いだり、社員が働きやすい環境を作ることに加え、万が一、問題発生した際の影響(職場環境の悪化、離職、採用難、企業イメージの低下など)も念頭に取り組む必要があります。
例えば、社内アンケートで現状を把握し、具体的な対応策を練ったり、管理職・一般職への社内研修を行い、ハラスメントに関する認識を合わせ理解を深めさせるなど、問題の予防・解決のために実効性のある施策を検討・実施するとよいでしょう。
社員が働きやすい環境づくりを進めることで、社員の定着率やパフォーマンスを上げ、企業イメージの向上、採用活動への好影響なども期待できると考えます。
厚生労働省からも、研修用ツールなどが提供されていますのでご参考ください。
☞ <参考>あかるい職場応援団(厚生労働省)
社内アンケート
>>> 詳しくはこちら
ハラスメント対策導入マニュアル、研修資料等
>>> 詳しくはこちら
他社事例
>>> 詳しくはこちら
パワハラが発生してしまったら
対策を講じていても問題が起きてしまう場合もあります。社員からパワハラに関する相談が窓口担当者に入った場合、最初の対応が重要になります。
相談窓口の担当者等が、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止め方などにも配慮しながら、相談者及び行為者の双方から丁寧に事実確認等を行うことも重要です。以下、相談窓口担当者が心得ておきたいポイントになります。
(1)秘密が守られること。相談したことで不利益な取扱いをしないことを伝える。
相談者は会社に話をすることで、さらに事態が悪化したり、自分の立場が悪くならないかといった不安も抱えているかもしれません。そのため、まずは秘密が守られ、そして不利益な取扱いをしないことを伝え、安心して相談をしてもらう環境や雰囲気作りが大切になります。
(2)相談内容を5W1Hで正確に確認する。
相談者の話す内容が全て事実であるとも限りません。感情的になり話が誇張されていたり、受け止め方の問題や勘違いもあるかもしれません。そのため、相談内容を5W1Hで丁寧に確認することも重要です。相談者が証拠記録(手帳や録音データ等)を持っていれば、複製するなどして預かりましょう。
(3)同僚などの第三者にヒアリングしてよいかを確認する。
行為者のみならず、客観的な事実を確認するために第三者にヒアリングすることを伝え確認を取っておきましょう。
社内調査を行う際に、相談者の実名を出してよいかの確認も重要です。実名を出すことを拒んだ場合は、社内調査を行う際に具体的な事実を確認出来ない可能性もあることも伝えた方がよいでしょう。
(4)相談者への配慮措置、行為者への措置に関する希望を確認する。
調査結果を踏まえた配慮措置を行う際に、相談者の希望も予め聞いておきます。ただし、必ずしも希望に沿える訳ではないことも、きちんと伝えておくことが重要です。
☞ <参考>相談受付票(厚生労働省)
>>> 詳しくはこちら
社内調査のポイント
行為者に対して、パワハラに関する相談があったことを伝え、行為者の言動の目的・経緯等のヒアリングをし、事実確認を行います。
しかし、真にパワハラ体質な人は、本人にその自覚がないことが多いですので、相談者から証拠記録を預かっているのであれば、その内容を見せながら(相談者の同意が前提)事実確認を行っていきます。
行為者に対するヒアリングを行う際には、本ヒアリングをきっかけに相談者に対して報復行動を取らないよう、しっかりと伝えることが重要です。状況により、報復行動が懲戒処分に相当するということも伝えておきます。
相談者・行為者の意見が食い違う場合、相談者の同意のもとで同僚などの第三者へのヒアリングも行っていきます。
第三者にヒアリングを行う際は、会社はヒアリングに対応することで不利益な取扱いはしないこと、秘密は厳守すること。そして、その者に対してもこの場で話す内容について秘密を厳守することを必ず伝えます。
☞ <参考>行為者聞き取り表(厚生労働省)
>>> 詳しくはこちら
調査に基づく措置のポイント(配置転換)
社内調査で集めた情報をもとに、パワハラに該当するか否かの判断をし、パワハラの事実が確認できた場合、行為者の配置転換や懲戒処分等を今後の対応を検討する必要があります。
配置転換については、原則、パワハラ行為者に対して行うべきですが、会社によっては行為者を配置転換させると、その部署の業務が回らなくなる等の問題が発生する場合があります。
だからといって、相談者を配置転換させてしまうと「会社にパワハラを相談したことで、自分は不利益な取扱いをされた」と主張されかねません。相談者に対して丁寧に説明し、理解を求めるプロセスを経ることがとても重要になります。
調査の結果、パワハラの事実がなかったとしても、相談者本人の仕事に対する影響を考慮すると、何かしらの対応を取るべきでしょう。配置転換を行わないまでも、業務相談や申請ルートなどを分ける、席を離すなどの対応を取った方がよいでしょう。
調査に基づく措置のポイント(懲戒処分)
今後、パワハラを再発させないためにも、行為者に対して懲戒処分を行い、会社として毅然とした対応を取る必要があります。ただし、適正に懲戒処分を行い、その処分を有効なものとするために、以下の3つのポイントを満たす必要があります。
(1)就業規則の懲戒事由に記載があり、社内に周知されているか?
(2)パワハラ行為者の行動が、懲戒事由に該当しているか?
(3)懲戒処分が、社会通念上相当であるか?
極端に言えば、いくらパワハラ行為があったとしても、就業規則に懲戒事由となる旨の記載がなければ処分ができません。また、行った懲戒処分が無効とならないよう、就業規則はきちんと労基署への届出し、社員への周知をしておきましょう。
上記(3)の判断は、以下の3つの観点で判断されることになります。
1.問題行動と懲戒処分とのバランス
2.他の懲戒処分事案とのバランス
3.懲戒処分とするまでのプロセス
これらをきちんと踏まえておかないと、懲戒処分の対象者が処分の内容が不服として会社を訴えてくる等の恐れもあります。懲戒処分(特に重い懲戒処分)を検討する際には、専門家の意見も踏まえた上で対応することをお勧めします。
☞ <参考>裁判例を見てみよう(厚生労働省)
加害社員に対する懲戒(譴責)処分の可否
>>> 詳しくはこちら
懲戒処分通知を受けた際にパワハラを受けたとして慰謝料の支払いを求めた事案
>>> 詳しくはこちら
その他
>>> 詳しくはこちら
KING OF TIME 情報
今年も残りわずかとなってまいりました。
年末年始の休暇をどのように管理するかお悩みの管理者様もいらっしゃるかと思います。
今回は年末年始休暇の設定方法についてご案内いたします。
◆ 年末年始休暇設定の種類について
年末年始休暇設定の種類について
以下の2つの方法があります。
・休暇区分設定にて「年末年始休暇」という休暇を作成し、スケジュールに割り当てる。
・休みとしたい日を「祝日設定」で祝日登録し、休暇としてのスケジュールを登録する。
休暇区分設定を使用する場合、毎年の年末年始休暇スケジュール登録にご利用いただけます。
祝日設定を使用する場合、年末年始休暇としたい日を毎年、祝日登録する必要があります。
休暇区分設定で年末年始休暇を作成しないため、日数集計に休暇項目が増えることを懸念される企業様向けとなります。
☞年末年始休暇の設定方法について
~年末年始の営業日について~
誠に勝手ながら、下記日程を年末年始休業とさせていただきます。
2021年12月29日(水)~2022年1月3日(月)まで
~サポートセンターの営業時間について~
年末…2021年12月28日(火) 13:00まで (12:00~13:00も営業)
問合せフォーム、コールバック、チャット全てが対象
年始…2022年1月4日(火)
コールバック予約、問合せフォームの返信 9:30~
チャット13:00~
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。