監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄
今週のピックアップ
【労務情報】
◆ 休日に働かせたら休日手当の支払いが必要?
◆ 法定休日は特定する必要あり?
◆ 年末年始のお休みは「年末年始休日」? それとも「年末年始休暇」?
◆ よくある振休と代休の運用間違い
◆ 代休と代替休暇は全く異なる制度
◆ 振休や代休の半日付与は法律違反?
【KING OF TIME 情報】
◆ 従業員退職時のチェックポイント
◆ 在職外勤務エラーの確認
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休日に働かせたら休日手当の支払いが必要?
法律で定める休日とは、週に1回もしくは4週間を通じ4日付与する休日のことをいいます。
他方、週休2日制や国民の祝日などを休みとしている会社であれば、法律を上回る休日を与えていることになり、一般的に法定外休日と呼んだりします。
どちらも休日労働であることは変わりませんが、給与計算において以下のような違いがあります。
今回は、変形労働時間制などは導入しておらず、土日祝日を休日(法定休日は日曜日)としている事例でご紹介します。
なお、法定割増賃金は以下の通りです。
・時間外割増手当…1日8時間、週40時間超過した場合の労働に対する割増手当(25%)
・休日割増手当…法定休日に働いた場合の割増手当(35%)
(1)法定休日(休日割増手当の支払いが必要な場合)
日曜日を法定休日としているため、日曜日の労働については、休日割増手当の支払いが必要です。
(2)法定外休日(時間外割増手当の支払いが必要な場合)
月~金までの所定労働時間が8時間の場合、週40時間を超過しているため、土曜日(法定外休日)について、時間外割増手当の支払いが必要です。
(3)法定外休日(時間外割増手当の支払いが不要な場合)
週の途中に祝日などがあった場合や、1日の所定労働時間が8時間未満の場合、休日労働した場合でも時間外割増手当の支払いが不要な場合があります。
①月曜日~金曜日の間に祝日などでお休みがあった場合
月~金まで、各日8時間働いていた場合でも32時間しか働いていないため、土曜日(法定外休日)に休日労働した場合でも8時間まで(週の労働時間が40時間以内)であれば、時間外割増手当の支払いは不要です。
②所定労働時間が7時間の企業の場合
月~金まで、各日7時間働いた場合でも35時間しか働いていないため、土曜日(法定外休日)に休日労働した場合でも5時間まで(週の労働時間が40時間以内)であれば、時間外割増手当の支払いは不要です。
①②いずれの場合でも法律で定める時間外割増手当の支払いは不要ですが、所定労働時間を超えた労働になるため、その労働時間については、追加の支払い(時給単価×100%)は必要です。
なお、ご紹介した内容は、法律上の考え方であり、就業規則で法律を上回る内容が定められている場合は、就業規則の内容に基づいて割増手当を支払う必要があります。
法定休日は特定する必要あり?
土日祝日を休みとしている企業は多いと思いますが、「法定休日は日曜日とする」といったように、法定休日を特定する必要はありません。
行政の考え方は法定休日を特定することが望ましいとしているものの、義務付けまではされていませんので、特定していなくても法律違反ということではありません。
就業規則に法定休日を特定していない場合、土日両方休日出勤した週で、土日のどちらが休日割増手当の対象となるのかという疑問が出てきます。
この点について、行政解釈では、暦週の中で後に来る休日を法定休日労働と取り扱うこととされています。
土日のどちらか後に来るかは、週の始まりがどの曜日になるかによって決まります。就業規則等で週の始まり(起算日)を定めていない場合には、日曜日が週の始まりとして取り扱うことになっているため、法定休日、週の起算日を定めていない場合は、土曜日の労働が休日労働ということになります。
上記が法律や行政解釈での考え方ですが、一方で勤怠システムでの運用を考慮しますと、法定休日を特定させた方が管理は楽になる印象です。
年末年始のお休みは「年末年始休日」? それとも「年末年始休暇」?
従業員にとっては同じお休みでも、休日と休暇では大きな違いがあります。
そもそも、休日と休暇では、性質そのものが違います。
・休日:労働義務がない日(そもそも労働日ではない)
・休暇:本来は労働義務のある日だが、労働が免除された日(ベースは労働日)
休暇の代表例は年次有給休暇です。
年次有給休暇は、労働日にしか取得することは出来ません。年次有給休暇を取得することで、本来は労働義務のある日だが、労働が免除される訳です。
休日と休暇の大きな違いとして、残業代単価の計算金額に影響が出る点です。
残業代単価は、次の計算式で求められます。
・残業代単価=賃金÷月の平均所定労働時間×法定割増率(時間外の場合1.25)
ここでいう「月の平均所定労働時間」は、
年間の労働日数(365-労働日)×1日の所定労働時間÷12か月
となります。
そのため、休日の日数が多ければ多いほど、月の平均所定労働時間は減ることになり、残業代単価が上がります。
他方、休暇の日数は、いくら増えても元々労働日であるため、残業代単価の計算には考慮されません。
ここでのポイントは、就業規則にどのように記載しているかです。
名称は「年末年始休暇」でも、休日に関する条文に記載をしていれば、上記で言う「休日」として扱うことになります。
休日と休暇の違いについては、過去のブログでも詳しく紹介していますので、ご参考にしてみてください。
【参考】【休日と休暇の違い】~休暇・スケジュール管理機能の活用方法~(過去ブログ)
よくある振休と代休の運用間違い
振替休日(振休)とは、事前に休日と労働日を入れ替えることで、労働日だった日を休日に、休日だった日を労働日とすることです。そのため、休日だった日に労働させても休日割増手当の支払いは必要ありません。
他方、代休とは、その分賃金相殺ができることにはなりますが、休日労働をさせた事実は消えないため、休日割増手当の支払いが必要になる点が大きな違いです。
また、よくある勘違いとして、振休であれば、割増賃金の支払いは必要ないという考えがありますが、振替休日を翌週に取得させた場合など、時間外割増手当の支払いが必要になるケースがありますので、注意が必要です。
詳細は、過去のブログで紹介していますので、ご参考にしていただけたらと思います。
【参考】間違えて運用していませんか? ~振替休日・代休の運用~(過去ブログ)
代休と代替休暇は全く異なる制度
2023年4月から、中小企業でも月60時間を超える残業に対して追加で25%の時間外割増、つまり50%割増(25+25%)を支払う必要があります。原則は追加で25%の時間外割増を支払う必要がありますが、労使協定を締結することで、追加で賃金を支払うのではなく代わりに休暇を取得させることが可能となります。
この休暇のことを代替休暇といい、一般的に運用される、休日出勤させた後に代わりに休日を取得させる「代休」とは全く意味が異なります。
引用:改正労働基準法のポイント(厚生労働省)
「代替休暇」は法律上定められている休暇ですので、導入する場合には労使協定を締結することが必要です。
労使協定で以下の事項について定める必要があります。
①代替休暇の時間数の具体的な算定方法
②代替休暇の単位
③代替休暇を与えることができる期間
④代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日
また、付与する単位は、1日、半日または半日のいずれかによって与えることとされています。そのため、時間単位で付与することは認められていませんが、他の有給休暇と組み合わせて半日の休暇を付与する方法は認められています。
引用:改正労働基準法のポイント(厚生労働省)
取得単位の他にも代替休暇を与えることができる期間が2か月以内までとされていたり、代替休暇の取得日の決定方法など、注意すべき点があります。
振休や代休の半日付与は法律違反?
法律上、休日は、原則、午前0時~午後12時(24時)までの暦日で与える必要があります。
振休は、事前に休日と労働日を入れ替える制度であるため、交換後の休日についても暦日で与える必要があります。
例えば、法定休日である日曜日に半日休日出勤し、翌日の月曜日に半日振休として運用するような場合、暦日で休みを与えていないため、振休としては認められません。そのため、日曜日の労働に対して、休日割増手当の支払いが必要になります。
他方、法定外休日や代休の場合は暦日で与えなければならないなどの法的制限はないため、問題ないということになります。
法定休日 | 法定外休日 | |
振休 | ×半日付与不可 | 〇半日付与可 |
代休 | 〇半日付与可 | 〇半日付与可 |
なお、代休の運用に際しては、就業規則に休日出勤何時間分が半休付与の対象になるのか、また、半休を取得した場合の賃金を相殺する旨の規定を就業規則に定めておく必要があります。賃金の計算方法に関しては、双方の理解が違っていると、労務トラブルになりやすいですし、うっかり未払いとならないように改めて就業規則の内容を確認しておきましょう。
今回は、休日に関するよくある間違いについてご紹介いたしました。休日労働をさせた場合、給与計算以外にも36協定上の上限規制の時間外労働なのか休日労働になるのかという観点からも十分な理解が必要です。
労働者の健康確保の観点からしっかりと休日を与えることが望ましいですが、休日労働が発生した場合の考え方を改めてご確認いただけたらと思います。
KING OF TIME 情報
前回は従業員の《入社編》についてお伝えいたしました。
今回は従業員の《退職編》についてご案内いたします。
3月は退職される従業員も多いのではないでしょうか。
従業員退職時のチェックポイントをご確認のうえ、退職者の処理をお願いいたします。
◆ 従業員退職時のチェックポイント
◆ 在職外勤務エラーの確認
従業員退職時のチェックポイント
1.退職日
退職日を登録すると、従業員による退職日以降のタイムカードへのアクセスや打刻を制限することが可能です。
入社日から退職日までの在職期間中の勤怠データは残り続けます。
【参考】従業員の退職時の対処方法(オンラインヘルプ)
2.認証情報の削除
ICカードによる打刻を行っている企業で、退職者が利用していたICカードを別の従業員に利用させたい場合、退職者に紐付いているICカード情報を削除することで、別の従業員のカードとして新たに登録することができます。
必要に応じて退職者の打刻に利用していた認証情報を削除してください。
【参考】【タイムレコーダー】退職者のICカードを再利用する方法(オンラインヘルプ)
在職外勤務エラーの確認
入社前、退職後の日付に打刻・スケジュールデータが登録されている場合、不整合なデータとして管理画面ホームの「対応が必要な処理」に在職外勤務エラーが表示されます。
注意点としては、打刻データだけではなく「みなし勤務パターン」による労働時間も課金対象となります。
管理画面トップの対応が必要な処理の在職外勤務が表示されている場合は、入社日と退職日をご確認のうえ、在職期間外の保管を必要としない勤怠データは削除していただくことをおすすめいたします。
【参考】在職外勤務(入社前や退職後)の勤怠データを削除する方法(オンラインヘルプ)
【参考】「エラー勤務」の確認 / 修正方法(オンラインヘルプ)
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。