監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄
今週のピックアップ
【労務情報】
◆ いつから?どう変わる?雇用保険料率の変更内容
◆ 昨年とは異なる!今年の年度更新手続きとは?
◆ 雇用保険の対象者とは?副業している場合はどうなるの?
◆ 労働保険料に含める賃金とは?テレワーク時の通勤手当は?
◆ 給与に反映されるのはいつから?
【KING OF TIME 情報】
◆ 時間帯アラートとは?
◆ 18歳未満の深夜スケジュールのエラー設定
◆ 具体的な活用方法:年齢制限のない深夜スケジュールのエラー設定
☞ KING OF TIME 情報は 《 こちら 》
いつから?どう変わる?雇用保険料率の変更内容
新型コロナウィルス感染症対策として、雇用調整助成金の費用や、失業者の増加により、失業等給付などの給付金の増加などを理由に、雇用保険の財政が悪化し、財政の健全化を図るために必要とされたためです。厚生労働省の発表によれば、雇用調整助成金の支給実績は、令和4年3月末時点で5.5兆円を超えています。
なお、雇用保険料率については、実は、毎年見直しが行われており、今年度は、令和4年3月30日に国会で成立し、下図の通り、令和4年4月1日から令和5年3月31日までの雇用保険料率が引き上げられることになりました。
今年は、2段階にわたって変更となり、4月から事業主負担分、10月から労働者負担分、事業主負担分が変更になります。
☞ 引用元:令和4年度雇用保険料率のご案内(厚生労働省)
昨年とは異なる!今年の年度更新手続きとは?
そもそも年度更新とは、会社が労働保険料(労災保険・雇用保険)を国に納める手続きのことで、前年度に収めた労働保険料を確定保険料として申告し、新年度の概算保険料の申告・納付とともに清算するため、年度更新と呼ばれています。
年度更新の手続きは、例年6月1日から7月10日までに行うことになっています(令和4年度は7月11日まで)。手続きが遅れてしまうと、政府が金額を決定し、さらに追徴金を課されてしまうこともありますので、必ず期限内にやっておきましょう。
さて、本題ですが、今年は、年度途中の10月に雇用保険料率が変更されるため、令和4年度の労働保険の年度更新においては、雇用保険の分の概算保険料の申告・納付に関して次のような取扱いになります。
① 令和4年4月1日~9月30日までの賃金総額の見込額×保険料率(一般の事業の場合9.5/1000)
② 令和4年10月1日~令和5年3月31日までの賃金総額の見込額×保険料率(一般の事業の場合13.5/1000)
①と②を合算した金額を概算保険料として申告・納付します。
なお、賃金総額の見込額が前年度と比較して1/2以上、2倍以下の場合は前年度の確定賃金総額を見込額として取り扱いますので次のようになります。
① 前年度の確定賃金総額1/2×保険料率(一般の事業の場合9.5/1000)
② 前年度の確定賃金総額1/2×保険料率(一般の事業の場合13.5/1000)
①と②を合算した金額を概算保険料として申告・納付します。
雇用保険の対象者とは?副業している場合はどうなるの?
適用事業所(労働者を1人でも雇えば、適用事業所となります。)に雇用される労働者は、正社員や、パート、派遣などの名称や雇用形態に関わらず、以下のいずれの要件を満たせば、原則として被保険者となります。法人の代表者や、昼間学生のアルバイトなど一部の例外を除いては、労働者本人が希望するか否かにかかわらず、被保険者となります。
【雇用保険の対象者の要件】
① 週所定労働時間が20時間以上
② 31日以上の雇用継続の見込みがある
※平成29年1月1日から65歳以上の労働者も高年齢被保険者として雇用保険の対象者となっています。
副業など、複数の事業主から同時に賃金を受けている場合は、生活するための主たる給与をもらっている方でのみ被保険者となります。
なお、65歳以上の方の場合、令和4年1月1日にスタートしたマルチジョブホルダー制度を利用することで、1つの企業で加入要件を満たさなくても、合算で上記要件を満たせば、マルチ高年齢被保険者として雇用保険の被保険者となることができます。
被保険者となることで、失業した場合に高年齢求職者給付金を受給することが出来たり、育児・介護休業給付金を受給することも可能です。
<参考>
☞ 雇用保険マルチジョブホルダー制度を新設します。(厚生労働省)
>>> 詳しくはこちら
労働保険料に含める賃金とは?テレワーク時の通勤手当は?
雇用保険料の対象となる賃金は、税金その他社会保険料などを控除する前の総賃金額となります。ここでいう賃金とは、給料や手当、賞与などその他名称に関わらず、労働の対償として事業主が労働者に支払う全てのものをいいます。
そのため、結婚祝金など労働の対償とは認められないものや、出張旅費や宿泊費など実費弁償的なものは、賃金に含める必要はありませんが、通勤手当は賃金に含まれます。
最近では、在宅勤務が増えていることもあり、日によって、通勤が発生したり、発生しなかったりということがあります。その場合の通勤手当の取扱いについては、以下の通りです。
なお、ここでいう「労働契約上の勤務地」というのは、雇用契約書などで明示されている勤務地のことです。
本来の勤務地は会社となっているものの、新型コロナウィルスの影響や業務の都合などで、在宅勤務も認められているというような場合は、通勤手当として賃金に含める必要があります。
他方、雇用契約上、在宅勤務日が明示されている場合や、在宅勤務者として雇用され、全労働日が在宅勤務というようなケースでは、実費弁償として取扱って差支えないと考えられます。
また、保険料算定期間中(4月1日~3月31日)に支払いが確定した賃金は、算定期間中に実際に支払われていない場合でも賃金に含めて計算をします。
給与に反映されるのはいつから?
実際の給与に雇用保険料に変更が反映されるのは、「4月1日以降に最初に到来する締め日により支払いされる給与」となりますので、4月末締め、5月15日払いという会社であれば、5月15日払いの給与からとなります。
ただし、前述の通り、今年は、段階的に変更となりますので、給与に影響が出てくるのは、10月以降ということになります。
なお、社会保険料と違い、雇用保険料は、毎月賃金総額に保険料率(定率)を乗じて計算されるため、毎月保険料が異なります。
雇用保険料率は毎年見直しされることが決まっているので、準備をされている企業も多いと思いますが、近年、労働関係法令、社会保険関係法令の改正は、就業規則の改定や労使協定の締結にとどまらず、業務の見直しや人材配置などの実運用も含めて検討しなければならいないものも多いです。人事担当者だけでは対応が難しいようであれば、お早めに社労士などの専門家に相談することをお勧めします。
KING OF TIME 情報
今回は、18歳未満の深夜労働をチェックする機能についてご案内いたします。
労働基準法では18歳未満の年少者を午後10時から午前5時までの間(深夜帯)において、原則として労働させることはできません。(労基法61条1項)
時間帯アラート機能を活用することにより、18歳未満の従業員を深夜時間帯に意図せず労働させてしまうのを事前に防ぐことができます。
◆ 時間帯アラートとは?
◆ 18歳未満の深夜スケジュールのエラー設定
◆ 具体的な活用方法:年齢制限のない深夜スケジュールのエラー設定
時間帯アラートとは?
アラート設定のうちのひとつで、時間帯を指定し、その時間帯の範囲内か範囲外にスケジュールが登録されている、もしくは打刻があった従業員にアラートを表示できる機能です。
時間帯アラートには「予定」と「実績」があり、「予定」を選択すると予め定めた時間帯に対して、対象の従業員にスケジュールが割り当てられた際に、エラーを表示し登録ができないように制限をかけることが可能です。
18歳未満の深夜スケジュールのエラー設定
設定 ❯ 画面表示 ❯ アラート設定 ❯ 時間帯アラート登録
■ 対象区分:予定
■ エラー判定:エラーとする(デフォルト)
■ アラート:当日22:00~翌日05:00の範囲内
■ 年齢:18歳 0ヶ月未満
※事前に従業員設定にて生年月日の登録が必須となります。
対象年齢を18歳未満とすることで、スケジュール登録をした際に下記画像のようにエラーとし、スケジュール登録ができないように制限をかけることができます
☞ 18歳未満の深夜労働に対してアラートを設定できますか?
具体的な活用方法:
年齢制限のない深夜スケジュールのエラー設定
年齢を問わず、パート・アルバイトスタッフには深夜労働スケジュールを割り当てないようにシフトを調整したい場合にもこちらの機能を活用することができます。
設定 ❯ 画面表示 ❯ アラート設定 ❯ 時間帯アラート登録
■ 対象区分:予定
■ エラー判定:エラーとする(デフォルト)
■ アラート:当日22:00~翌日05:00の範囲内
■ 年齢:指定しない
■ 雇用区分:パート・アルバイト
年齢を指定しないことにより18歳未満ではなく、パート・アルバイトの方のみをエラー対象とすることができます。
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。