監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄
今週のピックアップ
【労務情報】
◆ 社員から休職の診断書が提出されたら
◆「休職」を命ずることを明確に
◆「休職」発令時の受診義務
◆「休職」期間中に注意したいポイント
◆「休職」期間満了時に気を付けたいこと
【KING OF TIME 情報】
◆ 補助項目の「登録」とは?
◆ 申請と編集の使い分け方
◆ 機能活用事例 ~プロジェクトの工数管理~
☞ KING OF TIME 情報は 《 こちら 》
社員から休職の診断書が提出されたら
遅刻や欠勤が増えていた社員から、ある日突然、医師の診断書とともに休職の申出がありました・・・。
さて、このような身近で起こりうる事案への対応として、自社の実情に応じた運用フローは準備されているでしょうか。
休職制度は、法律に規定されているものではないことから、会社毎に就業規則でそのルールを設定できることは前回の労務ブログでお伝えさせていただきました。
これまで労務相談をお受けした会社の中で、休職制度を適切に設け、社員に安心して療養してもらい、どのように職場復帰を促すかなどのルールを明確に定めている会社は、社員の定着率が高い傾向にあるようです。
厚生労働省が作成する「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、職場復帰支援の流れとして、以下のような5つのステップが紹介されています。
現場の実情に応じた職場復帰までの対応策が準備されているか、これを機に見直してみてはいかがでしょうか。
☞「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省資料)
「休職」を命ずることを明確に
休職は会社の規定によって、労働の義務を免除または禁止するものであり、会社側に休職を命令する権利があると考えられます。しかしながら、実務の現場においては、労働者の当然の権利として理解されていることが少なくありません。
また企業から就業規則の内容についてご相談を受けた際、その中身を拝見すると、休職が労働者の権利としてとられかねない規定の仕方をしているケースも多く見受けられます。
休職制度を設けることで社員が安心して療養に専念できる反面、それを当然の権利として悪用されてしまうと、他の社員の業務負担が増え、職場全体を疲弊させる要因に繋がりかねません。あくまで休職をさせるかどうかは、会社に裁量権を持たせるよう「休職を命ずることがある」といった規定の仕方をお勧めしています。
【労働者の権利としてとられかねない既定の仕方】
⇒「〇〇の場合は、休職とする」
【会社に裁量を持たせることができる規定の仕方】
⇒「〇〇の場合は、休職を命ずることがある」
なお、休職制度は一定期間解雇を猶予する措置であるという趣旨を考えると、当該社員の会社に対する貢献度(一般的には勤続年数)に応じて、休職期間を定めておくことが望ましいでしょう。
「休職」発令時の受診義務
実際に休職を発令するとなった段階で、労働者の健康状態を確認するために会社が指定する産業医等への受診を命じることはできるのでしょうか。
裁判例では、発令の段階ではありませんが、会社指定医による受診を拒否した労働者を休職期間満了に伴い退職扱いとした措置を有効としたケース(昭和61年11月13日 東京高裁)がある一方で、うつ病で休業していた社員に回復可能性がある中で、会社指定医が連絡しても回答を得られなかったため、主治医に治療経過等を問合わせることなく行った解雇を権利濫用として無効としたケース(平成22年3月24日 東京地裁)もあるようです。
以上より、休職に際して、会社が指定する医師の受診を拒否された場合も、主治医に対して状況に応じた問い合わせを行うなど、個別の事案に応じて慎重に対応することが必要となります。
「休職」期間中に注意したいポイント
1) 休職期間中の賃金
休職期間中に賃金を支払うかどうかは会社で自由に定めることができますが、労働者側の事由による傷病休職等の期間中は、「ノーワークノーペイの原則」により無給として、就業規則に規定しているケースが一般的です。
また、賞与の支払いにおいても、算定期間から休職期間分を控除して計算するケースが多いようですが、そのことを就業規則に明確に記載していない場合は、トラブルに繋がる可能性がありますので、自社の規定がどうなっているか確認しておきましょう。
2) 休職期間中の社会保険
休職期間中は会社の規定により労働義務が免除されますが、雇用は継続されますので社会保険料は発生します。前述のとおり、休職中は無給となることが一般的なため、就業規則に社会保険料を毎月期日までに会社が指定する口座に振り込むことなどを定めておきましょう。
3) 休職期間中の連絡
傷病休職期間中は、制度の趣旨から療養に専念する義務があるものと考えられます。休職者への配慮から休職中はコンタクトを控えるという対応をされる会社もありますが、社員の健康状態を把握するためにも、定期的に会社に現状を報告するよう就業規則に定めておくことが望ましいでしょう。
「休職」期間満了時に気を付けたいこと
本人から復職の申出があった際、復職させるか否かの基準が明確でないと「負担の少ない業務を希望したら復職を認められなかった」など、労使間のトラブルに発展するケースがあります。
復職の可否については、個々のケースに応じて総合的な判断が必要と考えられますが、休職前と比較してどの程度の業務を行うことができるかがひとつの判断要素となります。
この点について裁判例では、従前の業務に支障なく行える状態まで回復していなくとも、相当期間内に回復することが見込まれ、当人に適切なより軽易な業務が存在するときには、会社規模などを考慮しつつも、使用者は配置転換を検討する信義則上の義務を負う、と判断される傾向にあるようです。
実務の現場においては、一定期間はリハビリ業務などで負荷を減らして、徐々に元の業務に戻していく流れが一般的と思われます。
ただし、トラブルを防止する観点では、休職前と同じ業務への復帰を前提とした復職基準を明確に定め、休職前にその基準を当該社員に丁寧に説明しておくことで、復職にあたっては心身の十分な回復が必要なことを意識してもらうことができるでしょう。
そのうえで、自社の実情に応じた職場復帰支援の運用フローを準備しておくことで、社員も安心して療養し、職場復帰できると考えられます。
KING OF TIME 情報
今回は「補助項目機能の拡充」についてご案内します。
従来の補助項目機能は、従業員の申請と管理者の承認までがワンセットでしたが、従業員による補助項目の登録が可能になりました。
◆ 補助項目の「登録」とは?
◆ 申請と編集の使い分け方
◆ 機能活用事例 ~プロジェクトの工数管理~
補助項目の「登録」とは?
管理者に申請せず、直接自身のタイムカードに補助項目を登録できる機能です。
従業員が補助項目編集により登録した内容は、従業員自身で削除することもできます。
☞ 補助項目を従業員が直接登録できるようになりました(2022年6月14日リリース)
申請と登録の使い分け方
従来ある【申請機能】と新しく追加された【登録(編集)機能】の使い分け方は以下の通りです。
【申請機能】
・管理者の承認/棄却が必要な内容(交通費・私用外出など)
【登録(編集)機能】
・管理者の承認/棄却が不要な内容(裁量のある業務記録など)
補助項目を設定する際は、申請する補助項目なのか、編集可能な補助項目なのか名称で判別できるように、名称:〇〇(申請)など申請・編集の区分をわかりやすく登録することをおすすめいたします。
機能活用事例 ~プロジェクトの工数管理~
昨今の新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに在宅ワークを取り入れている企業が多くなっています。
それに伴い労働時間とは別に、各業務やプロジェクトにかけた時間数の管理をしたい企業様も多いのではないでしょうか。毎日の工数管理はしたいけれど、申請承認は従業員・管理者双方に負担がかかります。そのような時は、ぜひ補助項目の登録をご活用ください。
※補助項目は、時間外集計などを算出する機能と連携しておりません。
労働時間とは別に作業時間や交通費などの記録管理にご活用ください。
☞ 補助項目設定
☞ 補助項目を登録するにはどうすればよいですか?(PC / モバイル) ※従業員用
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。