監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄
今週のピックアップ
【労務情報】
◆ 年末調整ってなに?
◆ 源泉徴収とは
◆ 年末調整の準備
◆ 年税額(所得税)の計算
◆ 年末調整後の処理
【KING OF TIME 情報】
◆ 祝日設定とは
◆ 休日と祝日が重なった場合の対応方法
☞ KING OF TIME 情報は 《 こちら 》
年末調整ってなに?
年末が近づくにつれて総務担当者は、業務が慌ただしくなる時期ではないでしょうか。
今回は「年末調整」の全体像をわかりやすくご案内したいと思います。
例年行事のため制度の概要をご存じの方は多いと思いますが、年末調整を一言でいうと、最終的な年税額を年末に計算し、精算する手続きのことです。
通常、社員が納付する所得税は、毎月の給与や臨時の賞与などを支給するたびに、そこから控除(源泉徴収)しています。
ただし、「扶養する家族に異動があった」場合や、「生命保険料や地震保険料などの所得控除がある」等の理由により毎月の給与控除額の合計と本来の年税額が一致しないケースが多く、1月から12月までの1年分の収入が確定した時点で正確な所得税額を計算し、過不足を精算するため年末調整を行うことになります。
この年末調整は、源泉徴収義務者である会社に実施が義務付けられており、年末調整を実施した後は、税務署や社員が居住する市区町村にその内容を報告することが必要です。
年末調整のおおまかな流れは以下のとおりです。
源泉徴収とは
日本では給与支払の際に、支払者である会社がその支払金額から所得税を徴収して、国に納付する「源泉徴収制度」が採用されています。
もともと源泉徴収制度は、昭和15年の税制改正で、納税の簡易化、納税者の捕捉などを目的に、所得税に導入されました。
その後、戦後の税制改革で、国民全員が確定申告をする負担を軽減するために、年末調整制度が採用されました。
このように課税対象者がすべて確定申告を行うと、税務署の事務混雑や申告忘れなどが発生する恐れがあることから、会社が年末調整により正しい年税額を計算したうえで、その内容を税務署へ報告するようになったという経緯があります。
一般的に給与所得者は、勤務先から受ける給与以外に所得がないか、給与以外の所得があってもその額が少額であるという人がほとんどのため、勤務先で年末調整を行うことで、その年の納税が完了し、確定申告は不要となっています。
ただし、以下に該当する方は年末調整の対象とはならず、確定申告の手続きが必要な場合がありますのでご注意ください。
● 1年間の給与収入の合計額が2,000万円を超える人
●「災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律」の規定により、本年分の給与に対する源泉所得税及び復興特別 所得税の徴収猶予又は還付を受けた人
● 2か所以上から給与の支払を受けている人で、他の給与の支払者に扶養控除等(異動)申告書を提出している人
● 年の中途で退職した人(年末調整の対象とならない事由に該当する場合)
● 非居住者
● 継続して同一の雇用主に雇用されないいわゆる日雇労働者
年末調整の準備
年末調整を行うにあたって、社員からは以下の書類を提出して貰います。
1. 給与所得の扶養控除等(異動)申告書
扶養の有無に関わらず会社へ提出が必要な書類(右上部に丸囲みの「扶」の字が印字されているため、通称「マル扶」)です。
控除対象となる扶養者がいる場合は、その対象や人数に応じた控除を受けることができます。
2. 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
基礎控除等を受けるために会社へ提出が必要な書類です。
令和2年からこの様式となり、3つの申告書(基礎控除、配偶者(特別)控除、所得金額調整控除)が兼ねられたものとなりました。なお、合計所得金額が2,400万円以下の人すべてに適用されるのが基礎控除の「48万円」になります。
3. 給与所得者の保険料控除
その年に支払った生命保険料や地震保険料等の控除を受けるために、会社へ提出が必要な書類(右上部に丸囲みの「保」の字が印字されているため、通称「マル保」)です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金等も、この書類で申告を行います。
4. 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
住宅ローン控除や住宅ローン減税を受けるために会社へ提出が必要な書類です。
個人が住宅ローン等を利用して、マイホームを購入した場合に、この書類で申告を行うことになります。
なお、近年話題になることも多い「ふるさと納税」については、年末調整で所得控除を行うことができませんので、別途ご自身での手続きが必要です。
年税額(所得税)の計算
具体的な計算方法の詳細は割愛しますが、年税額(所得税)は下記のようなステップで計算します。
(1) 1年間の給与・賞与の支給額から課税総支給額を計算
(2) 給与所得控除後の給与等の金額を計算
(3) 所得控除額の計算(各申告書に記載されている内容に基づき控除額を確定)
(4) 課税所得金額の計算
(5) 所得税額の計算(住宅借入金等特別控除がある場合は差引きした額)
なお、令和4年分年末調整の詳細が知りたい方は、国税庁が作成している以下のリーフレットをご参照ください。
☞ 令和4年分年末調整のしかた(国税庁リーフレット)
年末調整後の処理
年末調整の事後処理として、以下の作業を行います。
1. 源泉徴収票の交付と源泉所得税の納付
年末調整が終わったら、源泉徴収票を社員に交付します。年末調整で過不足清算した後は所得税を納付します。過納税額となった場合は、充当(または還付)となります。
2. 税務署に源泉徴収票と法定調書合計表を提出
管轄税務署に「給与所得の源泉徴収票」と「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を提出します。提出期限は1月31日です。
3. 市区町村に給与支払報告書と総括表を提出
住民税を算出するため、翌年1月1日に社員が居住する市区町村に対して、「給与支払報告書(総括表)」と「給与支払報告書」を提出します。提出期限は1月31日です。
今回は「年末調整」の全体像についてポイントを絞って解説させていただきました。
年末調整は、申告書の回収やその内容の確認、書類の作成・提出など作業工程が多く、総務担当者にとっては時間も手間もかかる作業です。
しかし、最近ではそういった作業負担を軽減するため、クラウド型の年末調整システムを導入する企業も増加傾向にあるようです。また、自社のコア業務に集中するために、そもそも年末調整の作業自体をアウトソーシングしているケースもあります。
まだ年末調整を自社で紙の申告書を利用して行っているようであれば、方法の見直しなどを検討されてみてはいかがでしょうか。
KING OF TIME 情報
今年も残すところ僅かとなりました。
そこで今回は来年に向けての準備として「祝日登録」についてご案内します。
KING OF TIMEでは、毎年「祝日登録」を更新していただく必要があります。
特に自動スケジュール設定を登録している場合、事前に祝日登録を行わないと正しく反映されないケースがあります。
毎年11月には翌年の祝日登録をされておくことをおすすめします。
◆ 祝日設定とは
◆ 休日と祝日が重なった場合の対応方法
祝日設定とは
日本の祝日や会社独自の休日をタイムカードに反映する機能です。
祝日登録した日付はタイムカード上で赤色の表示がされるため、他の平日と分けて扱いたい場合は祝日登録が必要です。
※スケジュール管理または個人タイムカードから祝日登録した日付が赤く表示されていることが確認できます。
なお、会社の設立記念日など独自の休日を祝日としたい場合は、手動登録のほかインポート機能にて一括登録も可能です。
☞【インポート】祝日の一括登録方法(祝日データ[CSV])
休日と祝日が重なった場合の対応方法
休日と祝日が重なった場合、祝日設定が優先されます。
例えば、以下の自動スケジュール設定をしている場合、日曜日と祝日が重なると、KING OF TIMEでは「法定外休日」扱いになります。
日曜日の勤務日種別を「法定休日」にしたい場合は、祝日設定にて該当の祝日を削除しましょう。
設定手順:設定 > その他 > 【祝日設定】 > 該当祝日のゴミ箱マーク > 【削除】
その他の注意事項は、以下のオンラインヘルプをご参照ください。
☞ 祝日(会社独自の休日)を登録するにはどうすればよいですか?
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。