監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄
今週のピックアップ
【労務情報】
◆ 報酬・賃金の考え方
◆ 社会保険の報酬
◆ 労働保険の賃金
◆ 所得税の給与所得
◆ インフレ手当
◆ 通勤手当
◆ 永年勤続表彰金
◆ 在宅勤務手当
【KING OF TIME 情報】
◆ アップデートのお知らせ(2023年2月7日リリース)
◎ 休暇みなし時間帯の実労働時間の計上について
◎ Myレコーダーの重複打刻防止機能について
☞ KING OF TIME 情報は 《 こちら 》
報酬・賃金の考え方
会社が従業員に支給する金品のうち、労働の対価として支払われるものについては、社会保険(厚生年金保険、健康保険)では「報酬」、労働保険では「賃金」、所得税では「給与所得」と、その呼び方は様々です。
これらに該当すると原則、社会保険・労働保険料や所得税の計算の対象となるという点では共通していますが、その内容によっては、計算の対象とするか否か判断に迷うものがあります。また、同じものでも、制度ごとにその取扱いが違う場合があるため注意が必要です。
今回は、こうした手当等をいくつか取り上げ、その解説をいたします。
社会保険の報酬
社会保険における報酬とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのものと規定されており、以下の2つの要件を満たすものが「報酬」として判断されます。
(1)被保険者が自己の労働の対償として受けるもの
(2)事業所から経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計にあてられるもの
なお、労働の対償として受けるものでないものや、事業主が恩恵的に支給するものは労働の対償とは認められないため、原則として報酬には該当しません。
≪【例】報酬に含まれるもの≫
賃金、給料、俸給、賞与、インセンティブ、通勤手当、扶養手当、 管理職手当、勤務地手当、休職手当、休業手当、待命手当、傷病手当金と給与の差額補填を目的とした見舞金
≪【例】報酬に含まれないもの≫
傷病手当金、労働者災害補償保険法に基づく休業補償、解雇予告手当、 退職手当、内職収入、財産収入、適用事業所以外から受ける収入、出張旅費、赴任旅費、見舞金、結婚祝い金、餞別金、大入袋
労働保険の賃金
労働保険における賃金とは、賃金、給料、手当、賞与、その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主 が労働者に支払うすべてのものと規定されており、以下の2つの要件を満たすものが「賃金」として判断されます。
(1)「事業主が労働者に支払ったもの」であること
(2)「労働の対償として支払われたもの」であること
なお、「労働の対象として支払われたもの」とは、一般に、労働協約、就業規則、労働契約などにより、その支払が事業主に義務づけられているものをいいます。
任意的なもの、恩恵的なもの、実費弁償的なものは、「労働の対償」として支払われるものではないので、賃金には該当しないとされています。
所得税の給与所得
会社が従業員等に支給する手当は、原則として給与所得となります。具体的には、残業手当や休日出勤手当、職務手当等のほか、地域手当、家族(扶養)手当、住宅手当なども給与所得となります。
しかし、例外として、次のような手当は非課税となります。
(1)通勤手当のうち、一定金額以下のもの
(2)転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの
(3)宿直や日直の手当のうち、一定金額以下のもの
《 給与所得の金額の計算方法 》
収入金額-給与所得控除額 = 給与所得の金額
収入金額には金銭で支給されるもののほか、給与の支払者から受けた次のような経済的利益も含まれるとされています。
・商品などを無償または低い価額で譲り受けたことによる経済的利益
・土地や建物などを無償または低い使用料で借り受けたことによる経済的利益
・金銭を無利息または低い利息で借り受けたことによる経済的利益
インフレ手当
最近の物価高騰に対して、生活費補助を目的に、「インフレ手当」を支給する企業が増えてきているようです。
インフレ手当の支給としては、以下2つの方法が考えられます。
(1)一時金として支給
(2)毎月一定額を支給
インフレ手当を支給した場合、社会保険・労働保険、所得税の取扱いはどのようになるでしょうか。
まず、所得税は支給の方法によらず課税の対象となります。
次に、社会保険・労働保険については、一時金として支給した場合、臨時的な賃金と見る向きもありますが、報酬の定義や支給の目的から考えると、計算の対象として賞与と同じ取扱いで対応する必要があると考えられます。
毎月一定額を支給する場合は、社会保険の随時改定(月額変更届)の対象となる可能性がありますので注意が必要です。
要件に当てはまれば保険料が上がるため、手取り額の観点では支給の効果が薄れます。
また、就業規則の改定なども必要となります。規定する際は、期間を設けたり、物価上昇がおさまった場合に会社の判断で手当の支給を止められるよう明記しておきましょう。
通勤手当
会社へ通勤するための費用について手当を支給する場合、社会保険・労働保険ではすべて保険料額算定の基礎に含めるのに対し、所得税においては一定の額までは非課税となります。
【社会保険・労働保険の取扱い】
保険料計算のもとになる算定基礎額は、非課税の通勤手当も含めて計算します。
【所得税の取扱い】
公共交通機関(電車やバスなど)を利用して通勤する場合の非課税限度額は、1か月15万円までとなります。
3か月定期や6か月定期代をまとめて支給する場合は、1か月あたりの金額に換算して1か月15万円を超えなければ、非課税扱いとすることができます。
マイカー通勤の場合は、距離に応じて非課税限度額が決まっています。
マイカーと電車を併用(自宅から駅までは自動車で、駅から会社最寄り駅までは電車など)した場合は、その合計額が15万円までが非課税の対象となります。
永年勤続表彰金
永年勤続表彰は、勤続年数が長い従業員を讃えるための制度で、従業員の離職防止等のため導入している企業も少なくありません。
【社会保険の取扱い】
社会保険においては、永年勤続表彰金が報酬に該当するかの判断は、個別の事案ごとになされますが、社会通念上妥当な範囲の金額であれば、基本的には報酬の対象とはならない、と考えてよいでしょう。
【労働保険の取扱い】
労働保険においては、労働保険対象賃金の範囲の「賃金としないもの」として、「勤続報奨金」が例示されてあり、賃金に該当しないと考えることができます。
【所得税の取扱い】
社会保険の報酬や労働保険の賃金の対象とはならない一方で、所得税においては、永年勤続表彰金として支給される金銭等を非課税とする定めがないため、給与所得に含める必要があります。
在宅勤務手当
在宅勤務手当の所得税や社会保険料の取扱いにつきましては、過去にこちらの労務ブログで取り上げていますので、ご参照ください。
KING OF TIME 情報
今回は2月に新たに追加された機能についてご紹介します。
新機能を活用して、今後のKING OF TIME運用にお役立ていただけますと幸いです。
◆ アップデートのお知らせ(2023年2月7日リリース)
◎ 休暇みなし時間帯の実労働時間の計上について
◎ Myレコーダーの重複打刻防止機能について
休暇みなし時間帯の実労働時間の計上について
半休および時間休の取得時間帯まで勤務が長引いた場合、実労働時間と休暇みなし時間の両方を計上するか、休暇みなし時間のみ計上するかを選択できるようになりました。
このような方におすすめ!
・実労働時間と休暇みなし時間の両方を合算した残業時間を計上したい
・残業計算に関わらず、休暇みなし時間のみ集計したい
※休暇取得方法が「休暇区分使用」のお客様が対象です。
詳細は以下のオンラインヘルプをご参照ください。
【参考】半休 / 時間休と重複する労働時間の計上有無の設定方法(休暇取得方法「休暇区分使用」)(オンラインヘルプ)
Myレコーダーの重複打刻防止機能について
Myレコーダーとは、Webブラウザを利用してスマートフォンやPCで打刻ができる個人用のタイムレコーダーです。
デスクトップ版タイムレコーダーで実装している、連続打刻防止に役立つ「同一コードの再認証間隔」機能をMyレコーダーにも追加しました。
「同一コードの再認証間隔」で設定した秒数内に同じ打刻種別で打刻した場合、「既に打刻受け付け済みです」というメッセージが表示され、打刻が登録されなくなります。
このような方におすすめ!
・打刻方法にMyレコーダーを採用している
・Myレコーダーの連続打刻を防止したい
詳細は以下のオンラインヘルプをご参照ください。
〇 【Myレコーダー】連続して打刻してしまう場合の対処方法(同一コードの再認証間隔)
その他、新機能リリース情報は以下のオンラインヘルプよりご確認ください。
〇 「KING OF TIME 勤怠管理」:アップデートのお知らせ(2023年2月7日)
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。