監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄
今週のピックアップ
【労務情報】
◆ 法改正対応の準備をしておきたいという企業からの相談
◆ 法改正のチェックポイント
◆ 無期転換ルールも再度チェックしておこう
◆ 無期転換=正社員ではない
◆ 今から準備すべきこと
【KING OF TIME 情報】
◆ 勤怠管理者におすすめの「勤怠レポート」について
◆ 打刻時間とPCログ乖離時間の確認方法について
◆ データ分析活用セミナー動画について
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法改正対応の準備をしておきたいという企業からの相談
社会保険労務士Aさんのところで、飲食業を営んでいる顧問先企業D社の労務担当Eさんから、法改正の電話がかかってきました。
担当Eさん:
2024年4月から、労働者を雇う際の法改正があると聞きました。概要を教えてください。
社労士Aさん:
雇用契約をする際に義務付けられている労働条件の明示すべき内容が変更になります。まず、就業場所、従事すべき業務を明示されていると思いますが、これに加えて、将来予定されている変更の範囲を明示しなければなりません。
担当Eさん:
例えば、ホールスタッフとして採用した従業員について、キッチン業務などに従事してもらう可能性があるのであれば、変更の範囲に「キッチン業務」などと記載しておく必要があるということですか?
社労士Aさん:
そうですね。加えて有期契約の場合は、契約を更新する場合の通算契約期間や更新回数の上限があるかどうか。そして通算5年を超えた、つまりその方に無期転換権が発生した場合には、本人が無期転換を希望するしないにかかわらず、会社は「あなたは無期転換できますよ」ということや、「仮に無期転換した場合の労働条件はこうですよ」ということについても明示するように義務付けられることになります。
担当Eさん:
これまでは、無期転換を希望するかどうか確認していませんでしたが、来年以降は無期転換を希望する従業員が増えそうですね。
社労士Aさん:
その可能性は考えられますね。また、無期転換社員の労働条件についても説明できるように事前にしっかりと準備しておきましょう。
法改正内容のチェックポイント
令和6年4月から施行される労働条件の明示に関する改正のポイントは、以下の通りです。
<全ての労働者に関する事項>
■ 就業場所・業務の変更の範囲の明示
雇用契約の締結(有期労働者の場合は更新のタイミングごと)をする際に、雇い入れ直後の就業場所・業務に加え、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲を記載することが義務付けられます。
勤務地や職種を限定して募集・採用し、雇入れ後も内容が変わらない場合は問題ありませんが、勤務地や職種を限定せず募集・採用し、将来的に配置転換をする可能性がある場合には、どのように記載するか決めておきましょう。
<有期契約労働者に関する事項>
■ 更新上限の明示
有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、通算契約期間または更新回数の上限の有無と内容の明示が必要になります。
また、最初の雇用契約をした後に、①更新上限を新たに設ける場合や、②更新上限を短縮する場合は、事前にその理由を説明することが必要となります。
■ 無期転換申込機会の明示
無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに無期転換を申し込むことができる旨の明示が必要になります。
■ 無期転換後の労働条件の明示
無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに無期転換後の労働条件の明示が必要になります。
無期転換ルールも再度チェックしておこう
下図の通り、同一の使用者に雇用され、有期労働契約期間が通算5年を超える場合、労働者の申込によって、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換することになります。
引用:厚生労働省リーフレット(無期転換ルールのよくある質問Q&A)
現行の法制度では、従業員に無期転換権が発生した場合でも、会社から無期転換が出来る旨を説明する義務はありませんでしたが、法改正後は、無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時に、無期転換申込が出来ることや、無期転換となった場合の労働条件を明示することが義務化されます。
無期転換後の労働条件を明確に定めていない場合、まずは、どのような労働条件にするのかを検討し、労働条件を説明できるように必ず就業規則に記載しておきましょう。
無期転換社員=正社員ではない
労働者から無期転換社員の申込があった場合、会社側がその申出を拒否することは出来ません。ただし、正社員と同様の労働条件に変更しなければならないということではありません。
あくまでも雇用期間について無期となるだけであって、支給する手当や退職金、特別休暇や休職制度などまで全く同じにする必要はありません。
ただし、定年までは働く長期雇用が前提となるため、従業員のライフステージに応じた手当や休暇制度などに待遇差がある場合は、労働者から不満が出る可能性があります。
そのため、無期転換社員について、そもそもの業務内容などを拡大した労働条件を定める方法も一つです。たとえば、無期転換社員については、長期雇用の中で幅広い活躍を期待し、無期転換前と比較し責任ある業務にも従事してもらうようにすることも可能です。なお、無期転換を抑止する目的で、実態がない労働条件を設定するようなことは問題になる可能性がありますので注意してください。
その他、勘違いしやすいポイントもご紹介します。
Q.無期転換社員となった場合、雇い続けなければならない?
定年を除き、労働期間の上限を定めることが出来ません。就業規則などで無期転換社員用に定年の定めをしておくことが肝要です。また、定年年齢(例60歳)を超えて無期転換社員となる場合も想定して、第二定年(例65歳)を設けておく方法も良いでしょう。
Q.無期転換の申込が出来るのは契約更新のタイミングのみ?
平成25年4月1日以降に開始した労働契約の通算期間がすでに5年を超えて雇用契約している場合は、その契約期間の初日から末日までの間、いつでも無期転換の申込みをすることが出来ます。
今から準備すべきこと
労働条件の明示義務に「変更の範囲」が加えられることにより、今後、どのような業務や勤務地に従事するかが、労使双方で明確化することになります。また、有期労働契約で更新回数や通算期間の上限を設ける場合は明示が必要となります。
この機会に、改めて雇用契約書を見直し、最新の法律に準拠した形になっているか、従業員への説明として十分な内容になっているかを見直してみましょう。
また、無期転換社員への申込機会の明示、労働条件の説明については、どのような労働条件にするか検討する方法と共に、有用な社員を確保するため、正社員登用制度の創設を検討してみても良いかもしれません。その場合、助成金を利用できる場合もありますので、就業規則の変更と共に、今にうちに準備を進めておきましょう。
KING OF TIME 情報
【KING OF TIME データ分析】
前回に引き続きKING OF TIMEのシリーズ製品である「KING OF TIME データ分析」についてご紹介します。
第四弾の最後は「勤怠管理者」におすすめの機能についてです。
シリーズ製品のお申し込み方法や注意点などは、以下の記事をご参照ください。
☞ KING OF TIMEシリーズ製品概要と申込方法について
◆ 勤怠管理者におすすめの「勤怠レポート」について
◆ 打刻時間とPCログ乖離時間の確認方法について
◆ データ分析活用セミナー動画について
勤怠管理者におすすめの「勤怠レポート」について
KING OF TIME データ分析では、KING OF TIME 勤怠管理から自動連携されたデータを、表やグラフなどで確認することができます。表やグラフは自動作成されるため、会社全体や部署ごとの労働時間推移の状況などをわかりやすく簡単に把握できます。
☞ KING OF TIME データ分析ではどんなことができますか?
打刻時間とPCログ乖離時間の確認方法について
近年残業代の未払いが大きな問題となっており、より実態に沿った勤怠管理が必要です。
KING OF TIME データ分析では、KING OF TIME セキュアログインと組み合わせて利用することで、「打刻時間」と「PCログ時間」の乖離時間を把握することが可能です。PCログを管理することにより出退勤打刻だけでは確認できない、サービス残業をしている可能性がある実態を把握できます。
☞ 勤怠差異「基準時刻との差異」ではどのようなことができますか?
データ分析活用セミナー動画について
今回ご紹介した、KING OF TIME データ分析の活用方法などについて、解説動画をご用意しています。
各担当者におすすめの機能やその他活用方法などにつきましては、下記リンクより動画をご視聴ください。
☞ KING OF TIME データ分析活用セミナー動画
勤怠管理者におすすめしたい機能については以上です。
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。