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【給与計算の知恵袋】社会保険の算定基礎届

公開日:2023年6月22日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 
監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 


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今週のピックアップ

【労務情報】
◆ 基礎知識 ① 算定基礎届の提出
◆ 基礎知識 ② 標準報酬月額の決定
◆ よくある間違い、勘違い(Trouble)
◆ 実践のポイント(Tips)

【KING OF TIME 情報】
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基礎知識 ① 算定基礎届の提出

社会保険料は、社会保険の被保険者の給与(入社時の見込み額や4~6月の実際に支払われた平均額)に応じて等級(標準報酬月額)が決まり、これに基づき決定されます。

算定基礎届とは、4月、5月、6月に実際に支払われた給与額(報酬月額)を届け出ることです。
これに基づき入社時や前年の4~6月に決まった等級(標準報酬月額)と現状の支給額との間にズレがないように見直しが行われ、当年9月~翌年の8月までの1年間の保険料が決定されます。(これを定時決定と言います)

この決定した標準報酬月額に基づいて、毎月の社会保険料額や将来の老齢年金等で受給できる給付額が決まるため、届け出漏れや間違いがないよう注意して作業を行う必要があります。

今回は「社会保険の算定基礎届」をテーマに取上げ、そのポイントをわかりやすく解説いたします。
算定基礎届の概要は以下のとおりです。

【提出期間】
令和5年7月1日(土)~令和5年7月10日(月)
※提出期限最終日が、土日祝日に重なる場合は翌営業日(平日)になります。

【提出先】
事業所管轄の年金事務所、日本年金機構の事務センター

【提出方法】
① 届出書、電子媒体(CD・DVD等)の場合
・持参(事業所管轄の年金事務所の窓口)
・郵送
② 電子申請

【提出物】
被保険者報酬月額算定基礎届(70 歳以上被用者算定基礎届)

※電子媒体(CD・DVD等)で提出の場合は、電子媒体届出書総括表も必要です。
※7月改定者がいる場合は、被保険者報酬月額変更届(70歳以上被用者月額変更届)も合せて提出。
※令和3年4月から算定基礎届総括表が廃止となっているため提出は不要です。

届書様式・添付書類の詳細は、日本年金機構の以下資料をご参照ください。

☞ 定時決定(算定基礎届)

 >>> 詳しくはこちら


【届出の対象者】
7月1日現在に在籍している被保険者全員となります。
育児休業中、介護休業中、二以上勤務、負傷疾病等で休職中、70歳を超えている方も届出が必要です。
ただし、下記に該当する方は届出が不要です。
① 6月1日以降に資格取得された方
資格取得時の標準報酬月額が翌年8月まで有効となるため。
② 6月30日以前に退職した方
「7月1日現在に在籍している被保険者」の要件から外れるため。
③ 7月改定の月額変更届を提出する方
④ 8月または9月に随時改定を予定されている旨の申出を行った方
ただし、随時改定の要件に該当しないことがわかった場合、速やかに算定基礎届の提出を行わなければなりませんのでご注意ください。

〈注意〉二以上の事業所に勤務する方の届出について
二以上の事業所に勤務する方については、それぞれの事業者宛に6月中旬以降、選択事業所を管轄する事務センターから届出用紙が届きます。各事業所の保険料は、すべての事業所から受ける報酬を合算し、標準報酬月額が決定され、それぞれから受ける報酬の割合によって按分して計算されます。

基礎知識 ② 標準報酬月額の決定

【標準報酬月額とは】
標準報酬月額とは、従業員が会社から受ける毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分して設定されたものです。この標準報酬月額を基にして、毎月の社会保険料の金額(厚生年金保険料や健康保険料)が決まっており、健康保険では50段階に、厚生年金保険では32段階の等級に分けられています。

労務画像1

☞ 令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)

 >>> 詳しくはこちら

報酬月額を決定、または変更する時期は以下のようなタイミングです。
(1)資格取得時
(2)定時決定
(3)随時改定
(4)産前産後休業、育児休業等終了時

【標準報酬月額の算出方法】
4月、5月、6月に支払われた報酬月額の平均 により算出します。給与が支払われた月が基準となり、毎月の給与が末締めで翌月10日支払の場合、算出に必要な給与データは「4月10日支払分(3月末締)」「5月10日支払分(4月末締)」「6月10日支払分(5月末締)」となります。

<算出の基本的な流れ>
① 4月~6月に支払われた報酬を計算
② 支払の対象となった日(支払基礎日数)が、17日未満の月を除いて合算
③ 支払の対象となった日(支払基礎日数)が、17日以上の報酬の総額をその対象月数で割り、平均額を算出

<短時間就労者(パートタイマー)の場合>
① 支払基礎日数が17日以上の月が1か月以上ある場合
 該当月の報酬の総額をその対象月数で割り、平均額を算出します。
② 支払基礎日数がいずれも17日未満の場合
 支払基礎日数が15日以上17日未満の月の報酬の総額を対象月数で割り、平均額を算出
③ 支払基礎日数がいずれも15日未満の場合
 従前の標準報酬月額で定時決定
※短時間就労者とは、名称問わず正社員より短時間の労働条件で勤務する方をいいます。

<特定適用事業所に勤務する短時間労働者の場合>
支払基礎日数は3か月とも、11日以上の月を対象とします。

※特定適用事業所に勤務する短時間労働者とは、特定適用事業所等に勤務する通常の労働者の1週間の所定労働時間、または1月の所定労働日数が3/4未満の方で、下記すべてに該当する方をいいます。
・ 週の所定労働時間が20時間以上である
・ 賃金月額が8万8千円以上である
・ 学生ではない

☞ 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大(日本年金機構HP)

 >>> 詳しくはこちら


短時間労働者である月と短時間労働者でない月が混在している場合や、算定対象となる期間の月の途中に、被保険者区分(短時間労働者であるかないか等)の変更があった場合ではそれぞれ判断が必要です。詳しくは下記ガイドブックの内容をご確認ください。

☞ 算定基礎届の記入・提出ガイドブック(日本年金機構HP)

 >>> 詳しくはこちら

よくある間違い、勘違い(Trouble)

(1)支払基礎日数を間違えている
支払基礎日数とは、その報酬の支払い対象となった日数のことをいいます。

■ 時給制や日給制の場合
⇨ 実際の出勤日数(有給休暇も含む)

■ 月給制や週給制の場合
⇨ 出勤日数に関係なく暦日数
ただし、欠勤日数分が給料から差し引かれる場合は、下記の日数となります。
⇨ 所定労働日数-欠勤日数
(所定労働日数は、就業規則、給与規程等に基づき事業所が定めた日数)
※この支払基礎日数が17日以上(一般被保険者の場合)あるか否かで、算出方法が異なるため注意が必要です。

また、給与計算の締切日と支払日の関係によっても、支払基礎日数が異なるため、こちらもよく確認しておきましょう。

■ 月給者の場合

労務画像2

(2)標準報酬月額の対象となる報酬を間違えている
標準報酬月額の対象となる報酬とは、名称に関わらず、労働者が労働の対償として受けるすべてのもの(賃金、給料、俸給、手当など)です。また、通貨に限らず、現物(通勤定期券、食事、住宅など)で支給されるものも報酬に含まれます。ただし臨時に受けるものや、年3回以下で支給される賞与等は報酬に含みません。

■ 報酬となるもの、報酬とならないもの

労務画像3

■ 賞与の取り扱い
<年3回以下の賞与>
報酬には含みませんが、標準賞与額の対象となるので、健康保険厚生年金保険賞与支払
届の届出が別途必要です。
<年4回以上の賞与>
年4回以上の賞与が発生した場合は、前年7月1日~本年6月30日の1年間に支払われた賞与の1/12の額を、算定基礎届けの各月の報酬に加算する必要があります。

(3)算定基礎届提出の要否の判断を間違えている
4月、5月、6月のいずれも、支払基礎日数が17日に満たない(短時間就労者は15日未満、短時間労働者は11日未満)場合、従前の標準報酬月額と同じ標準報酬月額で決定されますが、算定基礎届の作成・届出は必要です。
育児休業や介護休業、傷病休職等より、4月、5月、6月のいずれも報酬を全く受けない場合も同様ですので、届け出漏れがないよう注意しましょう。

実践のポイント(Tips)

算定基礎届の提出にあたって、実践のポイントは以下のとおりです。

(1)電子申請を活用しよう
算定基礎届の手続きは、電子申請での提出が可能です。電子申請を利用することで記入ミスや漏れを防げて業務の効率化に繋がるため、まだ紙で手続きを行っているようであれば導入をお勧めします。
なお、令和2年4月から、資本金または出資金の額が1億円を超える等の特定の法人は、社会保険に関する一部の手続きを行うにあたって電子申請が義務化されており、算定基礎届はその対象となっていますのでご注意ください。

電子申請の詳細については、以下のページをご確認ください。
■ 電子申請・電子媒体申請(事業主・社会保険事務担当の方)
■ 電子政府の総合窓口e-Gov

(2)年間平均が認められる場合の要件を確認しよう
4月、5月、6月の報酬の平均で標準報酬月額を算出することが「著しく不当」となる場合で、以下の要件をすべて満たしている時は、前年の7月から当年の6月までの給与の平均額から算出した標準報酬月額で決定することが出来ます。

<保険者算定が認められる要件>
①「当年4月~6月の3か月間に受けた報酬から算出した標準報酬月額」と、「前年の7月~当年の6月までの間に受けた報酬から算出した標準報酬月額」の間に、2等級以上の差が生じた場合
② 2等級以上の差が、業務の性質上毎年発生することが見込まれる場合
③ 被保険者本人が年間平均で算出することを認めている場合

<具体的な手続き例>
● 4、5、6月の3か月平均
報酬月額 =(380,000円+380,000円+380,000円)÷ 3 = 380,000円
⇒ 標準報酬月額 38万円
● 毎年4、5、6月が繁忙期にあたり、他の期間よりも報酬が増える業種(部署)の場合で前年の7月から当年の6月までの年間平均320,875円
⇒ 標準報酬月額 32万円
必要な書類を届出することにより、標準報酬月額を32万円と決定することが可能

要件や提出書類の詳細については、以下のページをご確認ください。
定時決定のため、4月~6月の報酬月額の届出を行う際、年間報酬の平均で算定するとき(日本年金機構HP)

(3)手続き漏れがないよう注意
算定基礎届は、従業員が将来もらうお金(年金)の基となる標準報酬月額を決めるための大切な手続きです。
提出期限を大きく遅延してしまうと、標準報酬月額決定通知書の到着が遅くなってしまい、従業員の新しい等級の確認が出来ず、給与支給時に正しい社会保険料の控除が行なえない可能性が出てきます。
遅延以外にも、届出をしなかった場合や虚偽の届出を行った場合は、『6か月以下の懲役 又は 50万円以下の罰金』となってしまうこともあるのでご注意ください。

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監修元:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント

 
 
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