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テレワークを廃止する際の注意点

公開日:2024年3月21日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 
監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 


テレワークを廃止する際の注意点

今週のピックアップ

◆ テレワーク実施企業は減っている?
◆ 従業員にとってのテレワークの価値とは
◆ テレワークを廃止する際に検討しなければならないこと
◆ テレワーク廃止のマイナスイメージを払拭するためには
◆ 就業規則や雇用契約書のチェックも忘れずに

テレワーク実施企業は減っている?

コロナ禍をきっかけにしてテレワークを導入した企業が増えました。
しかし、コロナの感染症法の位置づけ第5類になったことで、テレワークを廃止し、従来通りの出社制度に戻そうという動きが目立つようになりました。

ただ、安易に廃止すると企業や従業員にネガティブな影響をもたらす可能性もあります。
このブログでは、テレワークの廃止を検討する際、注意していただきたいポイントを解説します。
自社の方針を固めるときの参考になれば幸いです。

公益財団法人 日本生産性本部「第13回働く人の意識調査」によると、テレワークを実施している企業は2020年5月の時点では31.5%でしたが、2023年12月には15.5%と大幅に減少しています。

労務画像1
引用:調査結果レポート(公益財団法人 日本生産性本部HP)



テレワークを廃止する理由は企業によって様々です。
・暫定的な措置であったため、元に戻したい
・社員同士のコミュニケーションの不足から生産性が落ちている
・業務プロセスが見えず、人事評価が困難になっている
・テレワークが不可能な部署もあるため、社内で不公平感がある
・業務を社外に持ち出す情報漏洩リスクを解消したい

これらの理由が主な理由としてあげられました。

従業員にとってのテレワークの価値とは

冒頭にご紹介した「第13回働く人の意識調査」では、テレワーク実施企業の従業員を対象に、今後もテレワークを行いたいか意向を確認したところ、「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」の合計は86.4%となり、テレワークの実施率が下がっているのとは対象的に、従業員は強くテレワーク継続を希望していることがわかります。

労務画像2
引用:調査結果レポート(公益財団法人 日本生産性本部HP)


テレワークによって通勤時間を家事や育児のための時間として使えるようになり、その結果、ワークライフバランスを実現してきたような従業員にとっては、テレワークの廃止は、他企業への転職へのきっかけにもなりかねません。
また、テレワークを導入していたことによって、遠方や海外の人材を獲得していたような場合、廃止することによって従来通りの通勤が可能な範囲での人材しか雇用できなくなります。

多くの企業で人手不足が課題となっている昨今では、人材の流出や採用の間口を狭くすることは致命的な問題にもなりかねません。

テレワーク廃止によるメリット、デメリットを検討することはもちろんですが、自社の従業員がテレワークについてどのように考えているか、現状の把握をする取り組みを行っても良いかもしれません。

テレワーク廃止をする際に検討しなければならないこと

前述したように、企業によってテレワークを廃止する理由は様々ですが、よくご相談を受ける理由について、検討すべき内容をご紹介します。

(1)社員同士のコミュニケーションの不足から生産性が落ちている
テレワークの場合、相手の状況が見えないため、出社している場合に比べ、ちょっとした質問をすることをためらいがちになり、その結果として、業務効率が下がってしまうということはあるかと思います。
教育の面でも同様に、OJT研修が主流である中小企業では、テレワークでは実施しづらい教育の場面も発生するでしょう。

ただ、教育がマニュアル等に基づいておらず、完全に属人的となっている場合は、注意が必要かもしれません。研修を担当している人が辞めてしまった場合や、知識・スキルがある特定の従業員に集中してしまうことで、業務の標準化の妨げとなってしまうかもしれません。

また、コミュニケーション不足については、バーチャルオフィスのようなリアルタイムで状況を把握できるツールを活用したり、定期的に1on1ミーティングを実施することで、問題を解消している企業もあります。自社で実施出来る内容がないのか改めて確認しても良いかもしれません。

(2)業務プロセスが見えず人事評価が困難になっている
テレワークによって、評価基準を成果主義に移行したが上手く運用出来ていないため、出社に戻して業務プロセスの見える化をしたいというケースもあるかと思います。
ただ、そもそもの評価制度が業務プロセスを評価するものになっているとは限りません。また、業務プロセスの見える化は、スケジュール管理やタスク管理など業務管理ツールを利用することで、進捗管理をすることも可能です。

もし、「遅くまで残っているから頑張っている」「雑談もせずに業務に集中している」というような評価基準であれば、単純に仕事が遅いという人を評価している可能性もあります。評価制度の運用が上手くいっていないと感じる場合、今までの評価体制を見直す機会になるかもしれません。

テレワーク廃止のマイナスイメージを払拭するためには

前出のデータからも従業員側はテレワークの継続を希望している人が多い可能性は高いと考えられます。そのため、テレワークを廃止するためには、ある程度従業員に配慮する形が望ましいと考えられます。

(1)ハイブリットワークの取組
完全にテレワークを廃止すると、従業員の生活にかなり影響があると考えられます。
従業員のワークライフバランスをいきなり崩さないように、突然完全週5日出社とするのではなく、週1日出社、週2日出社とハイブリッドワークを取り入れる方法も検討してみましょう。テレワークを廃止する場合でも猶予期間も長めに設定することをオススメします。
また、時差出勤制度を導入するなどの配慮も有効と考えられます。

(2)出社にメリットを感じさせる施策
出社時に利用できる無料のお菓子や飲み物を用意する、昼食代については補助を出すなど福利厚生を手厚くする方法です。

また、オフィスをフリーアドレス制にして、出社時の気分をリフレッシュ出来るような環境を用意する方法も考えられます。フリーアドレス制は、部署を超えたコミュニケーションが活発化することで、より生産性が上がる可能性も期待できます。

就業規則や雇用契約書のチェックも忘れずに

テレワーク廃止を検討するにあたり、雇用契約書や就業規則の内容を確認することも忘れてはいけません。
テレワークを導入する際、就業規則の変更や在宅勤務規程を設けたり、テレワークを前提とした雇用契約書を取り交わしている企業もあるかと思います。

もし、就業規則や雇用契約書の内容が、従業員がテレワークすることを権利として認めているような記載になっている場合は、就業規則等を変更しなければ、安易にテレワークを廃止することは出来ません。記載内容によっては、就業規則や雇用契約書を変更する必要があります。

なお、就業規則を変更し、その内容が従業員にとって不利益になる場合は、原則として会社から一方的に変更することは認められず、労働者の同意が必要になります。

テレワーク廃止の際は、従業員への丁寧な説明に加え、就業規則や雇用契約書の内容なども確認し、法的な観点からもトラブルが生じないよう準備を進めていただければと思います。



本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。


監修元:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント

 
 
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