監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄
今週のピックアップ
◆ 令和6年度の労働保険の「年度更新」
◆ 手続きの流れを確認
◆ 知っておきたい「年度更新」のQ&A
令和6年度の労働保険の「年度更新」
今年度の労働保険の「年度更新」に係るお知らせが厚生労働省より発表されています。
まず「労働保険」とは、労災保険と雇用保険の総称です。そして「年度更新」とは、その保険料について、概算保険料と確定保険料を申告・納付する手続のことです。
労働保険の保険料は年度(4月1日~翌年3月31日)を単位として、概算で保険料を納付し、年度末に確定したあとに精算という流れのため、基本的には2つの申告・納付をセットで行います。
令和6年度労働保険の年度更新期間は、6月3日(月)~7月10日(水)までとされており、電子申請は6月1日(土)から手続きが可能です。
保険料率については、労災保険率が令和6年4月1日より改定されますが、雇用保険料率の変更はありません。また、一般拠出金は平成30年度以降変更ありません。
例年どおり年度更新申告書は5月末頃に、各都道府県の労働局から発送が予定されていますので、手続きに遅れがでないよう、3月分の支払給与額が確定しましたら早めに準備を開始しましょう。
【 令和6年度の年度更新の手続き概要 】
■ 提出物 :「労働保険概算・確定保険料/石綿健康被害救済法一般拠出金申告書」等
■ 保険料率:労災保険率 > 令和6年4月1日より改定
◎『令和6年度の労災保険率について』(厚生労働省HP)
→ 雇用保険率 > 変更なし
◎『令和6年度の雇用保険料率について』(厚生労働省HP)
→ 一般拠出金 > 変更なし
■ 提出期間:6月3日(月)~7月10日(水)までの間に提出
■ 届出先 :管轄の都道府県労働局や労働基準監督署等
令和6年度の「年度更新」手続きの詳細は、以下の厚生労働省の資料や案内動画をご参照ください。
【参考】令和6年度 労働保険年度更新 申告書の書き方|厚生労働省
【参考】令和6年度 労働保険年度更新申告書の書き方(継続事業用編)|厚生労働省YouTube
手続きの流れを確認
年度更新の手続きのおおまかな流れは以下のとおりです。
① 申告書類の確認
管轄の労働局から送られてきた申告書の内容を確認します。
事業所の名称や所在地が印字されていますが、変更手続きを行っていない場合は、古いデータのままとなっている可能性があります。また、前年の申告済概算保険料額も照合を行い、誤りがないことを確認しましょう。
② 保険料計算と申告書の作成
前年度賃金総額に基づき確定保険料を算定し、申告済の概算保険料との過不足額を計算します。合わせて、当年度の概算保険料を算定し、申告書を作成します。
③ 申告と納付
期限までに作成した申告書の提出と、前年度の過不足額の精算と合わせて当年度の概算保険料の納付を行います。
「年度更新」の申告手続きは、電子申請と電子納付が便利です。
年度更新については、申告書を電子申請した場合にのみ電子納付をすることができますが、電子申請していない場合であっても、延納(分割納付)を申請した場合の第2期分以降については、電子納付が可能となっています。
なお、令和2年4月以降、特定法人(資本金また出資金の額が1億円を超える法人等)については、労働保険の年度更新の申告等を行う場合に電子申請が義務化されています。
知っておきたい「年度更新」のQ&A
「年度更新」の手続きを進めるにあたって、改めて基本的な事項を確認しておきましょう。
Q.労働保険番号(14桁)はどのように決まっているか?
労働保険番号は、事業所ごとに定められており、労働保険関係の届出書類の提出時に使用する14桁の番号で、以下のような仕組みになっています。
(府県)○○(所掌)○(管轄)○○ (基幹番号)○○○○○○ー(枝番号)○○○
(府県)2桁:都道府県を数字で表している番号です。
(所掌)1桁:「1」と「3」があり、「1」は労働基準監督署、「3」は公共職業安定所の扱いであることを表しています。
(管轄)2桁:管轄の労働基準監督署または公共職業安定所の番号です。
(基幹番号)6桁:事業所ごとに定められた番号です。
(枝番号)3桁:原則「000」となります。労働保険事務組合に委託しているときに番号が付与されます。
Q.「年度更新」で保険料を計算する期間はいつからいつまでの賃金か?
4月1日~翌年3月31日までに使用したすべての労働者に支払われた賃金(支払義務が具体的に確定した賃金)の総額で、保険料の計算を行います。
原則として、「年度更新」は社会保険の定時決定とは違い、支払日ベースではなく締め日ベースです。そのため、前年度の3月までに確定した賃金(賞与を含む)を基にして保険料額を計算しますが、以前から支払日をベースにして1年間の賃金集計を行ってきた事業所は、引き続き同様の計算方法で問題ありません。
Q.賃金に含まれないものとして具体的にどのようなものがあるか?
例えば、傷病で休職する被保険者に支給される傷病手当金(健康保険法)は、保険料を計算するための賃金総額には計上しません。
ただし、休職者も在籍している労働者ではあることから、申告の際は常用労働者として人数カウントすることになります。これは育児休業中の社員についても同様です。
この他にも、在宅勤務を行う社員に支給される在宅勤務手当のうち、業務の遂行に必要な費用の実費弁償に当たることが明らかである部分は、賃金に含まれないとされています。
労働保険の賃金に該当するかどうか、過去の労務ブログでも取り上げていますので、ご参考にしてください。
【参考】【給与計算の知恵袋】報酬に含む手当、含まない手当(過去ブログ)
Q.保険料の納付額が40万円以上の場合は分割納付ができるのか?
前年度の保険料不足額と合わせて納付額が40万円を超える場合でも、概算保険料のみで40万円未満の時は分割納付できません。概算保険料額が40万円以上(労災保険・雇用保険のどちらか一方のみ加入の場合は20万円以上)の場合か、労働保険事務組合に処理を委託している場合に分割納付することが可能です。
Q.一般拠出金は何のために納付する必要があるか?
「石綿による健康被害の救済に関する法律」により、石綿(アスベスト)健康被害者の救済費用に充てるため、平成19年4月1日から事業主負担で納付が必要とされています。
最後に・・・
2028年度から雇用保険の適用対象が、週所定労働時間については、現行の20時間以上から10時間以上となります。まだ先ではありますが、自社における現時点での対象者数の把握を行い、雇用保険に係る手続き業務や掛かる保険料等への影響度合いを見定め、必要に応じ方策を検討しておきましょう。
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。