監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄
今週のピックアップ
◆ 残業計算の基本的な考え方
◆「1か月単位の変形労働時間制」の残業計算
◆「1年単位の変形労働時間制」の残業計算
◆「フレックスタイム制」の残業計算
【KING OF TIME 情報】
◆ フレックス・変形労働制
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残業計算の基本的な考え方
労働基準法では、1日8時間、1週40時間を法定労働時間と定めており、このいずれかの時間を超過した場合に、時間外労働とし残業手当を支払う必要があります。また、時間外労働に対するもののほか、休日労働や深夜労働に対しても、割増賃金の支払いが必要とされています。
【基本的な割増賃金の種類と割増率】
【参考】しっかりマスター労働基準法 [PDF](割増賃金編)|東京労働局
◆よくある間違い◆
基本的な残業手当の計算方法は、ほとんどの方がご存じのルールかと思いますが、企業に実際の給与計算方法をお伺いすると、日では残業時間をカウントしていても、週の残業は考慮していない(1日8時間を超過した時間は残業としていても、週40時間を超えた時間を残業として集計していない)、といったケースもまだまだ少なくないようです。
企業によっては変形労働時間制を採用している場合があり、残業時間の集計方法が、原則のルールと異なってくるケースもあります。
今回は、働き方に応じた残業時間の集計方法などについて整理してご案内したいと思います。
「1か月単位の変形労働時間制」の残業計算
「1か月単位の変形労働時間制」では、「日の単位」「週の単位」「月の単位」の3つの視点で残業時間を集計することになります。
①「日の単位」
原則のルールでは、1日8時間を超えた時間が残業となりますが、「1か月単位の変形労働時間制」では以下の通りとなります。
■ 1日8時間超の勤務シフトを組んだ場合
→ シフトを組んだ時間を超えたところから残業
■ 1日8時間以下の勤務シフトを組んだ場合
→ 8時間を超えたところから残業
※所定労働時間の超過分は、超過時間数×時間単価で計算した額を支給する必要があります。
②「週の単位」
原則のルールでは、週40時間を超えた時間が残業となりますが、「1か月単位の変形労働時間制」では以下の通りとなります。
■ 週40時間超の勤務シフトを組んだ場合
→ シフトを組んだ時間を超えたところから残業
■ 週40時間以下の勤務シフトを組んだ場合
→ 40時間を超えたところから残業
なお「週の単位」で残業時間を計算する場合は、「日の単位」で計算した残業時間は除いて計算します。
③「月の単位」
原則のルールでは、「日の単位」と「週の単位」の2つでしか残業時間を計算しませんが、「1か月単位の変形労働時間制」はそれに加え「月の単位」でも計算します。
月の単位は、その月の暦日数によって変わってきます。
なお「月の単位」で残業時間を計算する場合は、「日の単位」「週の単位」で計算した残業時間は除いて計算します。
◆よくある間違い◆
「1か月単位の変形労働時間制」では、前述のとおり残業計算を「日の単位」「週の単位」「月の単位」の3つ全てで行う必要がありますが、1か月の労働時間を合計し、その時間が法律で定められている月の上限時間数(177.1時間、171.4時間 等)を超えた時間のみを残業時間としてカウントしている、要するに「月の単位」でしか残業計算を行っていない企業が意外に多い印象があります。
「1年単位の変形労働時間制」の残業計算
「1年単位の変形労働時間制」では、「日の単位」「週の単位」「年の単位」の3つの視点で残業時間を集計することになります。
「日の単位」「週の単位」の残業計算は、「1か月単位の変形労働時間制」と同様の方法で計算を行います。
なお、「1年単位の変形労働時間制」は1年間という長い期間を対象にしているため、過度に労働時間が偏らないように、労働時間と労働日数に関する制限がある点は注意が必要です。
「1年単位の変形労働時間制」は、「日の単位」「週の単位」に加えて「年の単位」でも計算します。年の単位は、次の計算式によって算出します。
まず、1年間は何週間かを求めます。
365日(1年間)÷7日=52.14週
次に、「1年単位の変形労働時間制」を採用した場合でも、1週間平均でみれば、40時間以内で働かせる必要があるため、1週40時間を乗じることで、年間での上限時間を求められます。
52.14週×40時間≒2,085時間
つまり、上限時間は、2,085時間(うるう年は2,091時間)となり、これを超過した時間は、残業時間として計上しなければなりません。「日の単位」「月の単位」で集計した残業時間は除いて計算します。
◆よくある間違い◆
「1年単位の変形労働時間制」を採用している企業において、残業時間集計の考え方そのものを勘違いしているケースはあまりありませんが、その運用方法を誤っているケースが散見されます。
「1年単位の変形労働時間制」では、いったん特定した労働日や労働時間を基本的には変更することは出来ず、会社が恣意的にシフト変更を行っている場合、その適用自体が否定される可能性があります。いったん特定した労働日や労働時間を変更することは原則出来ないと考えて運用すべきでしょう。
労使協定の中で双方の合意があればシフトを柔軟に変更しても問題ないのではないか、と考えている方もいらっしゃいますが、基本的にそのような運用は認められていませんのでご注意ください。
「フレックスタイム制」の残業計算
「フレックスタイム制」を導⼊した場合には、1日8時間、1週40時間という法定労働時間を超えて労働しても、ただちに時間外労働とはなりません。
清算期間における実際の労働時間のうち、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間数が時間外労働となります。
例えば、1か⽉を清算期間とした場合、法定労働時間の総枠が以下のとおりとなるため、 清算期間における総労働時間はこの範囲内としなければなりません。
会社の所定労働時間数を「1か月160時間」として定めている場合や、「月ごとの所定労働日数×8時間」などと定めている場合では、実労働時間が所定労働時間数を超えても、法定労働時間数は満たないケースも発生します。
その場合、所定労働時間数を超えた分(時間単価×超過時間数)の支払いは必要ですが、割増賃金の支払いは不要ということになります。
<具体例>
所定労働時間数160時間、法定労働時間数177時間、実労働時間数190時間
■ 所定労働時間(160時間)超で法定労働時間(177時間)以下の時間
→17時間×単価(割増ナシ)
■ 法定労働時間(177時間)超の時間
→13時間×単価×1.25(割増アリ)
◆よくある間違い◆
「フレックスタイム制」を導入しているにも関わらず、社員に出社や退社時間の予定を事前に申請させ、上長の許可を必要とするルールを設けている企業があります。1か月が経過しないと月の残業時間が確定しないため、働きすぎとなることを懸念してこのような対応を行っているケースもありますが、本来「フレックスタイム制」は、日々の始業、終業時刻を労働者に委ねる制度ですので、問題のある運用といえるでしょう。
【参考】 フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き [PDF]|厚生労働省
様々な働き方に応じた残業計算を正しく行うためには、法改正にも自動的にアップデートが行われるクラウド型の勤怠管理システムを導入し、適正に運用することが不可欠といえます。まだ導入されていない企業は、この機会にぜひご検討ください。
KING OF TIME 情報
KING OF TIME 勤怠管理は、フレックスタイム制、変形労働制など様々な就業ルールに対応しています。
【参考】KING OF TIME 勤怠|フレックス・変形労働制 >>>
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。