監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄
今週のピックアップ
【 労務情報 】
◆ 育児・介護休業法の改正概要
◆ 就業規則の見直し
◆ 労使協定の締結
◆ 個別周知・意向確認・情報提供
【 KING OF TIME 情報 】
◆ 時間有休の申請
☞ KING OF TIME 情報は 《 こちら 》
育児・介護休業法の改正概要
2024年5月に育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法が改正され、2025年4月1日から段階的に施行が予定されています。
改正点は以下のとおり大きく3つに分けられ、個別の施策は多岐にわたります。これらの大半は2025年4月1日からスタート予定です。
※①⑤ は2025年10月1日から。⑧ は施行済(2024年5月31日から)。
【 改正点 】
1.子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
① 柔軟な働き方を実現するための措置等の義務付け
② 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
③ 子の看護休暇の取得事由及び対象となる子の範囲の拡大等
④ 育児のためのテレワーク等の導入の努力義務化
⑤ 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務付け
2.育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代支援対策の推進・強化
⑥ 育児休業取得状況の公表義務を300人超の企業に拡大
⑦ 育児休業取得等に関する状況把握・数値目標設定の義務付け
⑧ 次世代育成支援対策推進法の有効期限の延長
3.介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等
⑨ 介護離職防止のための個別の周知・意向確認の義務付け
⑩ 早期の情報提供や雇用環境整備等の措置の義務付け
⑪ 介護休暇の対象者を協定により除外する仕組みの廃止
⑫ 家族介護のためのテレワーク等の導入の努力義務化
今回は、厚生労働省からの「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」をベースに、就業規則(育児・介護休業等規程)や労使協定の見直し、個別周知・意向確認・情報提供に関して、企業に求められている実務対応を中心にご案内いたします。
なお、2025年に予定されている法改正全般については、以前の労務ブログでも取り上げていますので参考にしてください。
< 参考 > 【 年末に総チェック 】2025年に実施される法改正情報
必要な就業規則の見直し
今回の法改正に伴って、就業規則(育児・介護休業等規程)の見直しが必要になります。
<2025年4月1日までに対応が必要>
(1)子の看護休暇の見直し
【 規定例(1) 】
第〇条(子の看護等休暇)
1.小学校第3学年修了までの子を養育する従業員(日雇従業員を除く)は、次に定める当該子の世話等のために、就業規則第○条に規定する年次有給休暇とは別に、当該子が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、子の看護等休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。
一 負傷し、又は疾病にかかった子の世話
二 当該子に予防接種や健康診断を受けさせること
三 感染症に伴う学級閉鎖等になった子の世話
四 当該子の入園(入学)式、卒園式への参加
ただし、労使協定により除外された、1週間の所定労働日数が2日以下の従業員からの申出は拒むことができる。
(2)所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
【 規定例(2)】
第〇条(育児・介護のための所定外労働の制限)
1.小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(日雇従業員を除く)が当該子を養育するため、又は要介護状態にある家族を介護する従業員(日雇従業員を除く)が当該家族を介護するために請求した場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、所定労働時間を超えて労働をさせることはない。
(3)介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
【 規定例(3)】
第〇条(介護休暇)
1.要介護状態にある家族の介護その他の世話をする従業員(日雇従業員を除く)は、就業規則第○条に規定する年次有給休暇とは別に、対象家族が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、介護休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。
ただし、労使協定により除外された、1週間の所定労働日数が2日以下の従業員からの申出は拒むことができる。
<2025年10月1日までに対応が必要>
(4)柔軟な働き方を実現するための措置等
【 規定例(4)】
第〇条(柔軟な働き方を実現するための措置)
(※5つの措置の中から、①始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ及び②テレワークの措置を講じた例)
1.3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(対象従業員)は、柔軟な働き方を実現するために申し出ることにより、次のいずれか1つの措置を選択して受けることができる。
一 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
二 テレワーク
2.1にかかわらず、日雇従業員からの申出は拒むことができる。
3.1の一に定める始業・終業時刻の繰上げ・繰下げの措置内容及び申し出については、次のとおりとする。
一 対象従業員は、申し出ることにより、就業規則第◯条の始業及び終業の時刻について、以下のように変更することができる。
・通常勤務=午前8時30分始業、午後5時30分終業
・時差出勤A=午前8時始業、午後5時終業
・時差出勤B=午前9時始業、午後6時終業
・時差出勤C=午前10時始業、午後7時終業
二 申出をしようとする者は、1回につき1年以内の期間について、制度の適用を開始しようとする日及び終了しようとする日並びに時差出勤Aから時差出勤Cのいずれに変更するかを明らかにして、原則として適用開始予定日の1か月前までに、育児時差出勤申出書により人事担当者に申し出なければならない。
4.1の二に定めるテレワークの措置内容及び申し出については、次のとおりとする。
一 対象従業員は、本人の希望により、1月につき10日を限度としてテレワークを行うことができる。
二 テレワークは、時間単位で始業時刻から連続又は終業時刻まで連続して実施することができるものとする。
三 テレワークの実施場所は、従業員の自宅、その他自宅に準じる場所(会社の認めた場所に限る。)とする。
四 テレワークを行う者は、原則として勤務予定の2営業日前までに、テレワーク申出書により所属長に申し出なければならない。
労使協定の締結
労使協定を締結することで、育児・介護休業、子の看護等休暇、介護休暇、所定外労働の制限、短時間勤務、柔軟な働き方を実現するための措置の対象者を限定することが可能です。
今回の改正により、「子の看護等休暇」と「介護休暇」については、2025年4月1日以降「入社6か月未満(継続雇用6か月未満)の従業員」を対象外とすることができませんので、もし労使協定で対象外としている場合は再締結を行いましょう。
なお、この労使協定については、労働基準監督署長への届出は不要です。
個別周知・意向確認・情報提供
2025年4月から、「介護離職防止のための個別周知・意向確認等の措置」が事業主に義務付けられます。
【 介護離職防止のための個別周知・意向確認 】
介護に直面したことを申し出た従業員に対して、事業主は介護休業、介護両立支援制度等を周知し、制度利用の意向を確認する必要があります。
【 介護に直面する前の早い段階での情報提供 】
事業主は、仕事と介護の両立支援制度を十分活用できないまま介護離職に至ることを防止するため、従業員が介護に直面する前の早い段階(40歳等)で、介護休業、介護両立支援制度等に関する情報提供を行う必要があります。
【介護離職防止のための雇用環境整備】
介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下の①~④いずれかの措置を講じなければなりません。
① 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
② 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
③ 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
④ 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
2025年10月から、「仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮」が事業主に義務付けられます。
【 妊娠・出産等の申出時と子が3歳になる前の個別の意向聴取 】
【 聴取した労働者の意向についての配慮 】
今回の法改正の目的は、育児と介護への支援(両立支援)の強化であり、その影響は多岐にわたるため、企業側で必要とされる規程の改定や運用の準備など、実務対応をしっかりと行っていきたいところです。
KING OF TIME 情報
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【参考】KING OF TIME デモツアー|時間有休の申請 >>>
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
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