30日間無料体験
オンライン見積
資料ダウンロード
労務情報

【業務の効率化を図る】社労士目線で考える電子契約の活用方法

公開日:2025年2月6日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄
監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄


【業務の効率化を図る】社労士目線で考える電子契約の活用方法

今週のピックアップ

◆ 電子契約とは
◆ 雇用契約書
◆ 誓約書
◆ 休職命令
◆ 育児・介護休業の個別周知・意向確認

 電子契約とは

電子契約とは、紙の契約書の代わりに電子的な形式で契約を結ぶ方法です。
電子署名法に基づき適切な電子署名を使用することで、紙の契約書と同等の法的効力が認められます。

中小企業においても、徐々に電子契約の利用が進みつつありますが、導入することで迅速な契約締結とコンプライアンスの強化を図ることができます。ある中小企業では、電子契約導入後、業務の負担が大幅に減少し労働時間の削減に繋がりました。

電子契約を導入するメリットは多岐にわたります。
1.業務の効率化
書面での契約において行っていた契約書の作成、送付、署名、返送までの一連の業務がオンラインで完結するため、作業にかかる時間が大幅に削減できます。また、書面をファイリングしたり、確認時に探す手間なども軽減できるでしょう。

2.コストの削減
紙代、印刷費用、郵送費用や保存場所の確保が不要になり、ペーパーレス化が促進されます。
また、電子契約では収入印紙が不要になることから、工事の請負契約などの高額な契約において大幅なコスト削減効果が見込まれます。
某大手企業では、全ての契約書を電子化することで、年間数千万円のコストを削減することができたといわれています。

3.コンプライアンスの強化
電子署名により、契約書の書き換えが困難となり改ざんが防止されます。
また、電子契約はタイムスタンプ(※)や署名の履歴が残るため、契約の履行状況を明確に証明できます。
※電子データに対してその作成日時や改ざんされていないことを証明するための技術

今回は、このように導入のメリットが大きい電子契約について、社会保険労務士視点の活用方法を考えてみたいと思います。

ピックアップに戻る ▲

 雇用契約書

従業員を採用した際、労働基準法第15条に基づき「労働条件通知書」を交付する必要があります。交付方法について、以前は書面に限られていましたが、現在では、従業員が希望すれば電子メールやSNSでの交付が認められています。
「労働条件通知書」とは、その名の通り、会社が従業員に対して労働条件を通知するための書面ですが、労使間のトラブルを防止するためには、単に通知をするだけでなく、双方の認識に齟齬が生じないよう、書面で契約を取り交わす(契約内容に合意する)ことが望ましいと考えられます。その書面のことを、「雇用契約書」といいます。

有期契約社員(パート・アルバイトなど)の契約更新時はもちろんですが、無期契約の社員(正社員など)であっても、報酬の改定や労働条件の変更があった際は、認識に齟齬が生じないよう再度契約を取り交わすほうがよいでしょう。

「雇用契約書」を紙で作成し、署名や押印などのやり取りを経て、物理的に書類を保管する一連の作業は手間がかかります。この「雇用契約書」の締結に電子契約を利用することで、手続きが迅速かつ確実に完了できますので、業務効率の大幅な向上が見込まれます。

なお、労働条件明示のルールについては、2024年4月より改正されています。
労働契約の締結時や有期労働契約の更新の際、「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要とされていますので、まだ対応ができていない会社はご注意ください。過去の労務ブログでも取り上げていますので参考にしてください。

< 参考 >
迫る法改正!雇用契約書の内容変更だけでは不十分!~労働条件明示義務について徹底解説~|過去ブログ

ピックアップに戻る ▲

 誓約書

入社時に、従業員に対して「雇用契約書」だけでなく、企業ルールの遵守や秘密保持、競業禁止などを誓約することを記載した「誓約書」の提出を求めている企業も多いのではないでしょうか。
「誓約書」は、法律で交付が義務付けられてはいませんが、採用される従業員への期待や、遵守事項を明確にし、会社との認識を合わせる重要な役割があります。
目的により様々な「誓約書」の種類があります。

・入社時誓約書
服務規定の遵守等、入社後に特に注意し、守ってもらいたいことを記載
・秘密保持誓約書|技術上、営業上の情報を開示、漏洩、使用させない旨の記載
・自動車(自転車)通勤誓約書|事前申請、法令順守、保険加入必須等を記載
・貸与品使用誓約書|会社から貸与する備品の使用・管理を適切に行うための内容を記載

まだ「誓約書」の取り交わしを行っていない会社は、トラブルを未然に防ぐためにも、あらたに「誓約書」を取り入れてみてはいかがでしょうか。
こういった「誓約書」のやり取りについても、「雇用契約書」の締結と併せて電子契約を活用することが検討できます。

ピックアップに戻る ▲

 休職命令

私傷病に対する休職は、労働基準法や労働契約法に規定されているものではなく、休職制度を設けるか否かは会社で自由に決めることができます。
ただし、日本では長期の雇用が前提とされていることから、私傷病等を理由に労務の提供ができなくなった場合でも、会社側が雇用を維持しつつ、一定期間の労務提供を免除するために、休職制度が設けられていることが一般的です。

休職制度をどのように設けるかは会社の裁量によりますが、無用なトラブルを回避するためにもルールを明確に定めておくことが重要です。

主なポイントとしては、
・休職期間の長さ
・休職期間の通算限度
・休職、復職の基準
・医師の受診、会社指定の医師の受診義務
・症状の報告義務

などが挙げられます。

「休職命令」は、従業員が私傷病等で長期間就業ができない場合に、就業規則の規定に基づき発令することになりますが、手続きに不備(受け取っていない、内容を確認していない等)があると、従業員との間でトラブルになる可能性があるため慎重な対応が必要です。

この「休職命令」に電子契約の仕組みを利用すれば、単純にペーパーレス化や業務の効率化が進むだけでなく、対象となる従業員に到達していることや、内容の同意を得たことの証拠としての確実性が高まると考えられます。

ピックアップに戻る ▲

 育児・介護休業の個別周知、意向確認

育児・介護休業法が改正され、2025年4月1日から段階的に施行が予定されています。

< 参考 >
【ポイントを確認】2025年|育児・介護休業法改正の実務対応|過去ブログ

これまでも、従業員から本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があった際は、育児休業制度等に関する周知と休業の取得意向の確認を、個別に行わなければなりませんでした。
これに加えて、2025年4月1日からは、介護に直面した旨の申出があった従業員に対しても、同様の対応(制度の周知・取得の意向確認等)が必要となります。
また、2025年10月からは、仕事と育児の両立に関して「妊娠・出産等の申出時」と「子が3歳になる前」に、個別の意向聴取とその配慮が事業主に義務付けられます。

このように従業員の仕事と育児・介護が両立できるよう、会社側でも必要とされる業務が増加してきています。そのため、できるだけ効率的にその対応を進めることが望まれているため、こういった育児・介護休業に関する個別周知や意向確認についても、電子化を検討することができるでしょう。
例えば、育児や介護に関する申出があった際、従業員が希望した場合は、会社から必要なフォームを送り、当該従業員から電子署名を受けることで、その意向を受理したものとする、といった方法などが考えられます。

また、2025年4月1日からは、介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供が義務付けられます。
会社側から従業員に対して介護に関する情報提供を行う場合も、電子契約の仕組みを利用して、対象となる従業員へ情報提供を行い、受領確認してもらうことで、確かに情報提供を行った証拠となります。

人事労務の分野では、まだ紙の文化が根強く残っており、業務効率化を進める際の阻害要因となっています。また、リスクマネジメントの観点では、トラブル防止や発生に備えて書面や記録に残すことが重要ですが、実務的には手間が掛かるというジレンマがあります。これらを解決する方法としても、電子契約は、人事労務分野において様々な用途で利用が検討できるでしょう。

ピックアップに戻る ▲

本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。


監修元:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント

 
 
30日間無料体験バナー